レインウォッチャー

カルメンという名の女のレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

カルメンという名の女(1983年製作の映画)
3.5
これは、メリメでもビゼーでもないゴダールのカルメン。

ついに監督ご本人がご本人役で登場、病院に居座ってナースにセクハラかまして文明批判を繰り返す。そんな姿見とうなかったな…という思いもしつつ、かつて『ウイークエンド』で徹底的に叩き壊した車たちが夜の道路を流れる様子と、浜辺をさざ波が洗う様子が等価のごとくブリッジ的に挟まる姿に、作り手なりの老成か諦念を感じたりもする。

カルメンたちの行いが現実の犯罪なのか映画の撮影なのか、銃とカメラの違いは何か、次第に混濁してくる。200年近く経っても未だ探求され続けるベートーヴェンの弦楽四重奏のように、この映画もまた人類の宿題であり続けるのかもしれないね。