ろ

魔女の宅急便のろのレビュー・感想・評価

魔女の宅急便(1989年製作の映画)
5.0

「魔女の血、絵描きの血、パン職人の血。神さまがくれた力なんだよね。おかげで苦労もするけどさ」

よく晴れた満月の夜、13歳のキキは魔女修行に旅立った。
海の見える街を目指して。期待に胸を膨らませながら。
ラジオから「ルージュの伝言」が流れていた。

‘不安な気持ちを残したまま 街はDing-Dong遠ざかってゆくわ・・・’
パン屋を間借りしながら、店の手伝いと宅配の仕事をするようになったキキ。
しかし生活が軌道に乗り始めた矢先、空を飛べなくなってしまう。

仕事が上手くいく日もあれば、そうじゃない日もある。
嬉しいことの次に、やるせない気持ちが待っていることだってある。
魔法の力が弱くなってしまったキキは「何の取柄もなくなってしまった」と肩を落とす。
けれど森に住む絵描きは「あんたの顔、いいよ。この前よりずっといい顔してる」と言う。

「おそらく孤独が成長する時なのです。なぜなら、その成長は少年の成長のように苦痛を伴い、春の初めのようにものがなしいものです」とリルケが書いたように、キキも悲しみの味を知って一回り大きくなる。
私の不安や孤独と向き合うことが出来るのは私しかいないけれど、誰かと分かち合うことが出来るなら、それだけで心強くいられる気がする。

都会の人の流れや車の往来は、キキの生まれ育った町のように温かくはなかったかもしれない。
それでも、広場に集まった大勢の人たちから自然と声援が湧き起こる。
トンボを救ったキキと、固唾を呑んで見守り続けた人々。
二人の下にトランポリンを構える救助隊、私はその中の一人でありたいなと思った。
ろ