あんがすざろっく

アメリカン・ギャングスターのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

3.1
低温熟成。

リドリー・スコット作品をレビューしようシリーズ。

その道を進むなら、俺を倒してから行け😏
(ハイキューの天堂君風に)




かつてアメリカで、麻薬ビジネスによって巨万の富を得ていたフランク・ルーカス。彼を追うのは、決して裏金は取らず、己の正義感のみで悪を追い詰める刑事リッチー・ロバーツ。
2人の運命は交錯するのか。




はい。
正直なところ、僕は消化不良です。

アメリカで起きた実話なのだそうです。
実話だから、結末は動かしようがないけれど。
う〜ん。

こういうジャンルの作品って、相対する二人の対決が見ものじゃないですか。
「ヒート」がそうだし、「フェイク」とか「カリートの道」も、明確に対決はないけれど、沸々と湧き上がるアドレナリンが、作品の奥底に流れている。
要所要所で、その後の流れを変える衝突が繰り返されて、ラストの盛り上がりへ突き進んでいく。


この作品、その大きな盛り上がりがないんですよ。
低温のまま、ずっと燻っている。
その燻っているアドレナリンが、放出されることもないし、目にも見えない。
ある程度はアクションも起伏もあるけれど、どちらかと言うと、終盤までお預けをくらいます。

ラッセル・クロウとデンゼル・ワシントンの共演ですよ?
犯罪者を追い詰める刑事の話ですよ?
二人が火花を散らす展開を期待しちゃうじゃないですか。
なんだか、劇場で観た時に、モヤモヤした記憶があります。


ただね。
今までのマフィア、クライムものと同じことをやっても仕方ないし、リドリーも違う手法で撮りたかったのでしょう。

新鮮だったのは、リッチーの描かれ方かな。
正義感が強い故、賄賂は受け取らず、警察署内でも孤立していく。
私生活も破綻しかけているけれど、決して荒くれ者というだけではありません。
司法試験を受け、見事合格し、弁護士へと転身する努力の人でもあります。


彼らが生きた1960年代後半、アメリカはベトナム戦争の真っ只中、国内では麻薬が蔓延していました。
そんな中、フランクが築いた麻薬入手と販売のルートは、当時ではなかなか考えられなかったもののようです。

イタリアン・マフィアが幅を効かせていたアメリカで、カラードのフランクが一族を率いてその商売に割って入っていく。
正にルーカスファミリーを作り上げていったのです。

主役はどちらかと言えばデンゼル・ワシントン演じるフランクの方で、しかし彼は思慮深いのか、大胆なのか、いまいち分かりづらいキャラクターではありました。

ラッセル・クロウ演じるリッチーは、融通が利かないけど、自分の信念は曲げない。
マフィアどころか、腐敗しきった汚職刑事達にもメスを入れていきます。


フランクの弟役にキウェテル・イジョフォーも出演してますが、若い感じが新鮮です。

そしてリッチーよりも曲者、麻薬取締局のトルーポに、ジョシュ・ブローリン。
麻薬取締官が汚職塗れって、映画の中の話だけじゃなかったんですね…
そりゃ、誘惑も多いでしょうしね。


ラストのフランクとリッチーの対峙は、映画的な演出を廃したリアル。
でも、僕にはやっぱりこれがネックでしたね。
もうちょっとメリハリがあっても良かったなぁ。





2008年2月 有楽町 日劇にて
あんがすざろっく

あんがすざろっく