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波止場のアタフのレビュー・感想・評価

波止場(1954年製作の映画)
4.5
数多くのアカデミー賞を獲得しているこの『波止場』という映画。
齢30歳にして初めてこの映画を鑑賞しましたが、これは人々が"どのように生きるべきか"を提示してくれる人生の糧になるような映画でした。

普段はギャングの使いっぱしりとして生きる元ボクサーのテリー(マーロン・ブランド)、波止場の元締めであるギャングのボスの悪行に対して普段は見て見ぬふりをしているが、友人を殺されその妹と恋に落ちたことがきっかけで、ギャングの殺しの証言をするために立ち上がるという物語。

このような"巨大な悪"に対して立ち向かうことをテーマにした映画は他にもあると思いますが、この『波止場』は、マーロン・ブランドは演技力の高さにより、心境の移り変わりや、彼の葛藤が伝わってきて否が応でも共感させられる。
また、話の展開のさせ方も丁寧かつエモーショナルであり、エリア・カザン監督の力量も光ります。

この話はギャングに対抗する話であり、一見私たちには関係のないような話に思える。しかし、この映画の本質はある特定のシチュエーションに限った話ではなく、とても普遍的な話でもある。
例えば、学校でカーストの高いやつが好き勝手イジメしている状況であったり、会社で強権的な上司の元ブラックな労働環境がまかり通っている状況だったり、我々の日常のシチュエーションにも置き換えることが出来ると思う。
その中で我々がこの映画のマーロン・ブランドのように見て見ぬふりをせず、その悪に対して立ち向かうことが出来るか?反抗することが出来るのか?
自らの良心を抑え込まず、例え恐ろしかったとしても、例え悪い結果が想定されたとしても、その悪には立ち向かうべきだという強いメッセージがこの映画にはあると思う。

この映画は、ただ悪を倒してスカッとする単純な娯楽ではなく、人間の生き方に影響を与えるような大傑作映画だと思います。


*****2022年家で見た映画個人的ベスト10*****
毎年書いてるので今年も…

1位:セイントモード/狂信
2位:地獄の警備員(黒沢清)
3位:シークレット・ヴォイス
4位:波止場
5位:息子の面影
6位:プロデューサーズ(メル・ブルックス)
7位:戦場のメリークリスマス
8位:天国と地獄(黒澤明)
9位:過去のない男
10位:街のあかり
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