アタフ

ノベンバーのアタフのレビュー・感想・評価

ノベンバー(2017年製作の映画)
4.4
これがエストニアのおとぎ話なのか…??
モノクロの美しい映像たちによって構成されるこの映画は、舞台は中世?のエストニアの寒村、雰囲気はダークファンタジーであり、でも内容は純粋な恋愛物(三角関係)といった、今までに見たことのない摩訶不思議な映画でした。

冒頭から"農機具が組み合わさり牛の頭蓋骨をかぶせた謎の物体"がぎこちなく車輪のようにガシャガシャと動き回る映像から始まる。
「なんじゃこりゃ!?」といきなり面食らうが、その謎の機械が牛を鎖で縛ったかと思えば、牛を引き連れてヘリコプターのように空中移動をし始めるのだ、正直訳が分からないけど、意味不明な世界観にいきなり放り込まれる感じがしてとても楽しい。これから変な世界が見られるぞとワクワクさせられる。

どうやらこの謎の機械は"クラット"と呼ばれる使い魔であり、血を代償に何かしらの器具に悪魔を宿すことが出来るらしい。このクラットは悪魔を宿しているとは言いつつも、村人には結構ぞんざいに扱われていたり、道端で村人とすれ違った際は普通に挨拶を交わすなど、妙に生活に溶け込んでいて面白い。結構可愛げもあるので、うちにも一台欲しいものだ。掃除とか洗濯とかを任せたい。

また、このクラット以外の不思議な世界観として、タイトルにある通り11月1日「死者の日」になると死者が生き返るらしく、夜に待っていると白装束を着た死んだはずのじいちゃんばあちゃん達がぞろぞろと帰ってきて、「じゃあ家に帰りますか」と家に帰っていく。しかも帰ってた死者たちが気にすることと言えば隠しておいた宝のこと。。。「この俗物じじいども…とっとと死者の国に帰りやがれ!」とツッコまずはいられない。

こんな摩訶不思議な世界観の中、貧乏で食べるのもままならないさもしい村人たちを、ある時は哀れに、ある時は滑稽に描いています。
その中でも、この物語は村の若くて綺麗な娘リーナの恋模様を描いたもので、ダークな雰囲気の中で描かれる話とは思えない。リーナが恋する若くてハンサムな村人のハンスは、ドイツの男爵の娘に恋をする。日本のドラマでもよくありそうな三角関係のラブストーリーがどういった結末を迎えるのか??

ただ、この純粋なラブストーリーの中でも、欲に塗れた、暴力的で、差別的な要素も内包しているあたり、やなりただのラブストーリーではない。。。

また、結構ユーモラスな映画でもあり普通に笑ってしまうようなシーンも多々あります。正直、前日にみた『アムステルダム』よりは全然笑えた。

以前、同映画館のイメージフォーラムで見た『マルケータ・ラザロヴァー』と雰囲気はとても似ていたが、こっちのほうが断然オススメできますね。不気味で、変で、ユーモラスで、美しくて、そんな不思議な映画が見たい方は是非見てみてください。
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