けんたろう

凱旋門のけんたろうのレビュー・感想・評価

凱旋門(1948年製作の映画)
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全員可哀想なおはなし。


言葉には、自分が思う何倍もの責任が伴う。とても軽率に使うべきものではない。
イングリッド・バークマン(漸く拝見することができた。嬉しい限り!)演ずるジョアンという女性は、なるほどたいへんお美しいのだが、しかし言葉が余りにも軽く、また自分勝手で、責任というものが一切感ぜられないひとだ。その結末は因果応報としか言えない。

一方で、多くを語らぬ主人公は、寧ろ懸命である。だが主人公は主人公で、余りに懸命すぎるから困ったものだ。
つまるところ本作、軽すぎず重すぎずといったよい塩梅の者が居ない。
きっとその入れ違い擦れ違いから、どうにも一緒になれないのは運命だったのだろう。悲しくも仕方のないことだ。

しかし彼等やはり人間なり。受け入れることのできない現実に齷齪する姿は、至極人間なり。因縁の相手への復讐に囚われつゞけるのもまた。
あゝ…自らを制御できない人々に、少しく腹を立てながらも、大きく共感をした次第。