イペー

リトル・チルドレンのイペーのレビュー・感想・評価

リトル・チルドレン(2006年製作の映画)
4.0
いい歳して「あの頃のときめき、ワンスアゲイン!」なんて高望みして、現実を括弧の中に閉じ込めちゃって。

現実サイドのエントロピーは増大。
挙句に雪崩を起こしてもう、何もかもメッタメタ!
…なんてことも昨今よく耳にする、不倫は文化な現代社会。

アメリカの閑静な住宅街を舞台に、大人の階段踏み外しちゃった方達が、ジタバタと悲喜劇を繰り広げるのであります。

平凡な家庭生活に倦み、持て余した自意識が暴走してW不倫まっしぐらな主婦サラと主夫ブラッド。
子どもたちをダシに、市民プールでの逢瀬を重ねる二人。

回想シーンなどで特別に語られるワケではないけども、おそらくはイケてる青春時代を過ごしてきたはず。
束の間のロマンスで交わされる視線は、お互いに相手を通り過ぎ、過去の自分へと向けられているかのよう…でもある。

性犯罪で服役していたロニー、過去に起こした誤射事件が原因で警官を辞職したラリー。
不倫カップルの日常エクソダスと同時進行で描かれる、中年男二人の苦悩と迷走。

ある意味で対照的な二組ですが、現状に鬱屈とし、過去の呪縛から逃れられずにいる部分では同じ。
淡々と突き放すような語り口でMR.&Mrs.チルドレンの虚飾と欺瞞が暴かれてゆく様は、哀れでもあるし、可笑しくもある。

やがてそれぞれが現実と対峙し、それぞれのキッカケで決断を迫られることに。

とりわけロニーですよ…。
マザコンでペドフィリアで前科者、三重苦のキモメンが迎える結末…耳から血が出るかと思ったね…。

演出も演技も素晴らしく、おのれのダメさ加減と騙し騙し付き合っている自分といたしましては、嫌がらせのようなリアリティでしたね。
大人になるのって…ムズカシイね…。

『ハピネス』然り、『アメリカンビューティー』然り、変態が切ない映画にハズレなし。
日々をやり過ごすことに慣れ、生きる目的を見失いがちな"オトナ"の皆様にお勧めしたい良作でございました。

…最近は色々と自分自身を試されることが多く、気苦労が絶えません。
そのぶん映画の世界に逃げ込んでおりますが、全然レビューが追いつかず。
一日にひとつ上げてた頃とか、どうやってたのかしら…。
イペー

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