唯

美しすぎる母の唯のレビュー・感想・評価

美しすぎる母(2007年製作の映画)
3.3
上流階級に対する嫌悪と自身の出自へのコンプレックスに塗れたバーバラ。何とか手に入れた地位に縋りつこうと必死に彼らに合わせようとするも、生まれながらの金持ちに敵うはずがなく、一人空回りして浮いてしまう。そんな彼女を夫は完全に見下して軽蔑しているし、息子もまたストレスに晒されている。
夫には、理解しよう歩み寄ろうという姿勢がまるでなく、他の女へと逃げていく。まあ、そこまでに努力して諦めたのだろうけど。
夫との結婚によって手に入れた幸せだと、自分ではない存在によって成り立っているので、非常に脆くて不安定。不幸だとしても簡単には離れられないのがまた辛いところで。
自分のことだけで精一杯の母に育てられ、母の面倒も見る様になる息子。自分を大切にするより他者に尽くし過ぎる人間になってしまう。どんな育てられ方をしても子供は両親を愛してしまう。
というか、親のために生きてしまうことがしんどいよね。
夫のブルックスは、妻だけでなく息子からも逃げている。自分とは違う個人を持った息子を恐れているのだ。
夫からの愛を受けられず、愛に飢えている母。息子を夫の代わりとして息子に愛を求める様になる悲劇。夫婦間で愛情が育まれていないと、家族として機能していないと、子供に皺寄せが来るのだと改めて痛感。
愛とは、受け取って初めて他者に贈与することが出来る。その構造が崩れると大変なことになる。親からの真っ直ぐな愛情を受けられないと、子供は自分のことも他者のことも愛せなくなる。
依存関係にある母と子が適度な距離を取ることは難しい。この悲劇的ラストは、愛しているがための愛したいがための決別なのだろうか。
唯