Ren

トイ・ストーリーのRenのレビュー・感想・評価

トイ・ストーリー(1995年製作の映画)
4.0
以前書いていたピクサー作品のレビューを消して色々加筆し再掲することにした。
言わずと知れたピクサーの記念すべき長編第一作であり、映画の歴史を変えた一作。

世界初の全編フルCG長編映画というだけでも歴史的価値があるが、さらに物語としての面白さも遺憾なく発揮された名作になっている。
おもちゃは人間の見ていないところで動き回る、というユニークな世界観とそれを存分に生かしたストーリー展開。おもちゃの視点から描かれる日常の景色も新鮮だった。

設定はファンタジーだけど、完全なるおとぎ話にもミュージカルにも英雄譚にもなっていない地に足つけた語り口も良い。おもちゃが動くという一点を除いてその他はしっかりリアリズムに寄せている。だからこそ、ラストの半ば物理法則を無視したようなジェット花火空中アクションにカタルシスがある。あの瞬間にバズが「自分はおもちゃだ」という現実のトラウマを受け入れた上で打ち破るドラマの興奮のピークと同時に空間的縦軸の値もピークになるのが上手い。そもそもこれ自体がアニメならではのスペクタクルだ。

登場キャラクターに関しても、好感や共感に振りすぎていない、ともすればいけ好かないと一蹴されかねない面白さと優しさとクズさとやヤバさを兼ね備えているリアルがある(初期構想ではウッディはもっとクズだったが流石に人気が出ないだろうから変えたというのは有名な話)。
見てくれはポップだけども、その内側はピクサーブランドをディズニーと差別化して確立してやろうという気概に満ち溢れた血の滾るような映画だと思う。

そして何と言っても、今作を中盤のバズ大落下シーン無しには語れない。真理に気づき絶望の表情を浮かべるバズを俯瞰で映すカットは今作屈指の名シーン。
完全に凸凹コンビであるバズとウッディそれぞれが、自分がおもちゃとしてやるべきことを全うしていく姿がしっかり描かれているため、終わった後は必ず2人のことが好きになってしまう。

オープニングから、バズの登場から、車内置き去りから、ゲームセンターから、シドの家からアクションから、全部のシーンがキャッチーで記憶に残る映画。伝説。


《第68回アカデミー賞戦歴》
受賞
★特別業績賞(ジョン・ラセター)
ノミネート
⭐︎脚本賞
⭐︎作曲賞
⭐︎歌曲賞(You’ve Got a Friend in Me)
Ren

Ren