翼

アルマゲドンの翼のネタバレレビュー・内容・結末

アルマゲドン(1998年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

大人になってから過去の名作を見直すとまーツッコミ所が多くて実に楽しい。アルマゲドンなんてその最たるもので、余計かつ野暮なツッコミでレビューが伸びる伸びる。


イントロ部の石油採掘現場のドタバタ好きなんだよなー!石油掘ってる横でショットガンぶっ放して追いかけっことかさ、現場監督が一番やっちゃいけないことのど真ん中を行くブルースウィリス観れただけでもうニッコニコなオープニングでアルマゲドンは始まります。

終始一貫したとんでもねえアメリカ贔屓。
地球を救う宇宙飛行士は全員アメリカ人。
開発も全てNASAによるアメリカ製。
当然のように地球代表スピーチもアメリカ大統領。フルコンボです。
気持ちばかり登場するロシアのISS はオンボロ系機で館内の内戦さえ通信不通、補給燃料のバルブが錆びてすぐ折れるレバー一本。主のレヴは大男で変わり者ってド田舎のガソスタかよ!ロシアの最新鋭宇宙基地だぞ!「アメリカ以外なんてこんなもんッスわww」感を隠す気はないようだ。
上記に限らず全編を通じて宇宙飛行士へのリスペクトがそもそも足りないんよ。マジメに勉強ばっかりの宇宙飛行士ちゃん達より、採掘屋だけど荒くれ破天荒な俺たちの方が優れてるぜウェ〜イwwwな前フリが長いこと長いこと。宇宙に行ってからもあちこちで宇宙飛行士の無能描写が挟まり、『そんなんじゃダメダメ!(両人差し指でバッテン)現場ではお勉強の知識より経験に裏付けされた力技よ!これだからお利口さんは…(ヤレヤレ…)』って現場おじさん方のマウントが端々で滲む。なろう小説の読者層は40代〜50代らしいが、つまりこーゆーおじさん達が張り切って読んでるんだろうな…

リブタイラーは美人だけど本作では表情3パターンくらいの省エネ営業なので、宇宙の各種トラブルに対しリアクションがワンパターンで繋ぎ続けるには荷が重い。バッドニュースが入る度、長官と目が合う→心配顔のアップ(無表情)→更にバッドニュース→顔を手で覆ってうつむく→長官の居た堪れない顔。のくだりだけで2.5時間はもたないっすよ!要因としては彼女の人格描写が一切なく、「父と彼氏の帰りを待つ娘」以外の機能が与えられていないことが致命的。誰でもよかったんじゃないかな。スティーブンタイラーのバーター扱いも仕方ないような…この後大成してよかったね。ハルク良かったよ。

墜落したインディペンデンス号のAJが初見のローバーに乗り、計画着陸地点から40km離れた地点で採掘しているフリーダム組に合流する奇跡を例えると、
ブラジル→日本間(1700km)の10倍の距離の飛行機に別々に乗り、片方の飛行機が墜落。ナビ無し免許無しの初見マニュアル車で日本を目指す。東京集合のはずがもう片方の飛行機も誤って茨城県に着陸しているが、適当に走ってたらたまたまバッタリ取手あたりで遭遇するようなもん。こんなのは空想科学読本でさんざやられてるので今更野暮だが、こーゆーわかりやすく破綻している設定は嬉々として矛盾を調べてる時も面白いのでまぁ映画のもう一つの楽しみ方ということで看過してください。

核弾頭に跨ったり銃器ぶっ放して遊ぶロックの暴走は小学生当時「大事なにんむちゅうになんでそんなことしてるんだ!」とイライラしたものだが、今観るとそこまで違和感がなかった。そもそもが無茶苦茶なミッションであるということ、彼は訓練された宇宙飛行士ではなく一般人(且つかなりダメな方の人)であること、NASAに頼まれて来たのに政府が裏切って核爆弾で殺されかけたこと、頼みのドリルも壊れててここから挽回する手立ても何も無い絶望的な状況下。こんだけ条件揃ってて平静に使命に没頭できるハリーが超人過ぎたってわけで、彼は彼らしくオフザケしながら最後を迎えようとしていたわけだ。思えばもともとそーゆー人格なわけで、それを承知でハリーもNASAも彼をチームに入れてるわけで。常軌を逸した行動だと思ってたけど、大人になっていろんな絶望的な環境下を経験すると、どう足掻いてもダメだと全て投げ出して深夜にバッティングセンターにでも繰り出したくなる心理はわからんでもない。

ロシアのレヴがエンジン点火しないトラブルの時に「ロシアもアメリカもロケットはどっちも台湾製だ!こーすりゃ直る!」ってほっそいスパナで機械をカンカン殴りまくって直して脱出成功する描写、ブルースウィリスの功績に霞むが何気にヤツが影の立役者であることを地球のみんなは忘れるんじゃねーぞ。残存兵全員救ったんだぞ、もっと感謝してやれよ。AJ AJ言ってるリブタイラーお前は特にな!

こんだけツッコミ所しかないのにあの頃はなんであんなに泣けたのか忘れてたけど、最後にブルースウィリスが娘と交わす会話で納得。メタ的な意味でもあれだけハチャメチャやっといたにも関わらずビシィッと感動作の締めが決まるって、ブルースウィリスが名優と呼ばれる所以だね。ここまで無茶を通してきた人はウィリスさんにありがとうを言いましょうね。クソデカエアロスミスと相まって、「終わり良ければ全て良し!!」で許されちゃうね。
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