噛む力がまるでない

アルマゲドンの噛む力がまるでないのレビュー・感想・評価

アルマゲドン(1998年製作の映画)
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 マイケル・ベイが監督した1998年のSFアクションである。

 ディザスター映画が流行るきっかけになった作品のひとつだが、この映画に関しては世紀末に企画されたことが大きな意味を持っている。何しろこれを逃すと100年待たなきゃいけなくなるので、ジェリー・ブラッカイマーとしては世紀の流れを巻き込んだ大きな祭りにしたかったのかなーと思う。日本は日本でノストラダムス現象が起こっていたこともあり、そんな中で見るとより一層楽しい感じになっていたのではなかろうか(わたしも実はリアルタイムで見ているのだが、正直、あまりよく覚えていない)。

 テレビ地上波で流れていたものを見たが、150分の内容を2時間の放送尺におさめているので展開がかなり駆け足に思えるところがあった。宇宙ステーションの「ミール」に立ち寄るシーンなんかは5分くらいの間にいろんなことが立て続けに起こってもう何が何やらで、べつにあそこはカットしてもよいのではないかと思うのだが、ロシア人のアンドロボフ(ピーター・ストーメア)が一緒にシャトルに乗り込んでくるので切るに切れない。終盤でロックハウンド(スティーヴ・ブシェミ)がいきなりダクトテープでぐるぐる巻きにされているのも意味がわからないし、とにかくせわしない印象を受けた。ただ、これだけ端折ってもマイケル・ベイの高血圧演出が功を奏して異様な盛り上がりと感動はちゃんと担保されているし、最後にエアロスミスの「ミス・ア・シング」が流れるとなんとなくうまくまとまったように見えるので、やっぱり手堅い出来の作品なんだなと思う。

 日本テレビ版の吹き替えはとても素晴らしく、実写の個性的な登場人物にこれまた個性的な演出がつけられており、たいていのキャラクターは記憶と耳に残る。とくによくはまっているのが、スティーヴ・ブシェミをあてている我修院達也だ。ブシェミのアクの強さに我修院の声色がこうもうまくフイットするのかという感じで、とても良いキャスティングだと思った。ベン・アフレックをあてる楠大典の爽やか演技も今では貴重なものだし、郷里大輔の声はいつ聞いても圧倒的な迫力がある。