噛む力がまるでない

モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーンの噛む力がまるでないのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

 アナ・リリー・アミールポアーという監督の長編3作目である。

 小さな話だが、親子関係をちょっとしたSF設定できっちり描いた作品で面白かった。『レオン』のプロットをひっくり返したような内容で、抑圧を受けている無垢な大人を守ろうとする利発な子供がいるが、その親に問題が……というところがポイントだ。
 ボニー(ケイト・ハドソン)はモナ・リザ(チョン・ジョンソ)に俗世間のことを教える良い悪友になりそうなところを、貧窮の暮らしゆえにモナ・リザの能力を悪用する人物として描かれる。そんなボニーに息子のチャーリー(エヴァン・ウィッテン)は反抗心を募らせつつも、母親が自由になれないのは自分のせいだと自責の念も抱えている。チャーリーが家族という仕組みから解放されようとモナ・リザと逃亡を企て、ひとくさりあった後、再会した時にようやく家族らしい家族になるオチはありふれてはいるが、不思議なおとぎ話の中に非常にちゃんとした軌道が敷かれている。また、クライマックスの空港シーンはモナ・リザの能力を使えばスルーできるじゃないかというツッコミを入れたくなるが、チャーリーの重大な選択につなげるということをやっており、このあたりもよく考えていると思った。因果応報という一つのテーマを最後まで貫いているサービス精神も良い。

 面白かったのは町のチンピラ描写が類型的ではなく、けっこういい奴にしているところである。モナ・リザが病院を抜け出してから最初に出会うグループも変に絡むことはなく飲み物も靴も提供してくれるし、そのあと登場するファズ(エド・スクライン)も下心はありながら良いキャラで、困ったモナ・リザたちに親身になってくれるし、オシャレもばっちりキメてくれるというようなところも良かった。予告やポスターなどから予想する背景要素とは違う印象を受ける映画だが、全体的にはよくまとまっていて楽しめる作品だった。