アガサ・クリスティの有名作を1974年に映画化したもので、監督はシドニー・ルメットである。
オールスター映画としてとにかくリッチな感じがあり、お正月とかに見るような映画だ(冬休みにやってたらすごく良いと思う)。何度も挟まれる蒸気機関車のショットも作り手が列車映画としても意識しているというのがわかるし、オリエント急行の230G-353のたたずまいも最高である。
有名なオチの作品だが、それにしても大胆……というか、アガサ・クリスティの偉大すぎる発明なんだなと、あらためてそういうことを思った。ミステリーの分野でこれ以降みんな同じことはできないけど惹かれてしまう、それくらい魅力的な禁じ手だ。原作がそんな強度なので脚本家もオリエント急行よろしく悠々と書いている姿が目に浮かぶが、クライマックスからはものすごく筆が走っているように見える。クリスティの発明を映画ではじめて表現できることへの高揚感みたいなものがあって、これは脚本家冥利につきるだろうと思う。ポワロを演じるアルバート・フィニーもそれにサーフするような、オールスター興業のトリにふさわしい楽しい怪演を見せている。