噛む力がまるでない

人生は、美しいの噛む力がまるでないのレビュー・感想・評価

人生は、美しい(2022年製作の映画)
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 リュ・スンリョンとヨム・ジョンア共演のロードムービーである。

 よくある家族もののメロドラマで、心温まるストレートな内容だ。ただ、予告から想像するよりもずっとそのまんまのお話なので、ちょっと肩透かし感があった。ジンボン(リュ・スンリョン)が偉そうな態度を取りながらもセヨン(ヨム・ジョンア)のことを大事に思っていることは見ていてわかるし(ラストで種明かしがあるが冗長では?)、それ以上の夫婦の絆の深みみたいなものは描かれないので描写が手ぬるいような気はする。展開もかなり強引で、いろいろ気になるところはあったが、難病ものにしては深刻にしすぎずにからっとした感じでまとめていて、死を祝おうという着地は嫌いではない。

 見所のひとつとしては、ジンボンとセヨンの過去パートの見せ方で、髪型とかメイクで整えるにしてもアナログすぎるのだが、ここが妙にキュートで微笑ましいところがある。ジンボンなんかどれだけ若作りしてもおっさん感が抜けないが楽しそうにやっていて、たぶん作り手もわざとやっているのだろうと思う。ミュージカルの歌も全体的に歌謡曲調で、中高年が中心に見に来る映画としていろいろと趣向を合わせていてコンセプトは正しいと思う(主役2人のノットパーフェクトな踊りも良い)。あと平凡な中年カップルが主役のミュージカル映画が作られるのはいいことだと思うし、地味に暮らしている我々だって華やかに歌って踊ってもいいのだということを示していて、勇気が出る作品である。