亡くなった私の父は冗談話をして家族を笑わせるのが大好きだった。盆と正月には、酒を飲みながら、食台を囲んでメンバーの増えた家族（子の嫁や孫たち）に上機嫌でよく話してくれた。レパートリーは結構あったのだけれど、何度も聞かされた話もあったから、またかと思うこともあった。ある時、いつもの調子で機嫌よく話し始めて「この話知っとるか？」と聞いてくる。普段ならみんな「うんうん」と言って続きを促すのだけれど、その時なぜか私の口から出たのは「落ちも知ってるよ」。 父は「そうか」と言って、続きを話すのをやめた。いつもと違う展開にみんなは笑ったのだけれど、黙った父を見た瞬間、私はとても悪いことをしてしまったと感じた。別の話題でその場はすぐにいつもの和やかな雰囲気になったから、誰も覚えてないに違いない。でも私の心にしっかり刻まれ、父親が死んで何年もたつけれど、時々思い出すちょっと苦い思い出。
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父親の自慢話。それを素直に聞いてあげられるか、ホラ話と馬鹿にするか、それは受け手の気持ち次第。でも、ずっと否定したままだったら、こんな素敵なファンタジーは生まれません。父親への反発が、感謝の気持ちに変わる時がそのうちやって来ると思いますよ。
