こたつむり

少年は残酷な弓を射るのこたつむりのレビュー・感想・評価

少年は残酷な弓を射る(2011年製作の映画)
4.0
★ 育児に悩んでいるときに観てはいけない作品

寝る子は良く育つ。
という諺がありますが、これは言葉どおりに“睡眠が成長を促す”…とは別に“親の時間も確保され、相乗効果で周辺環境も整う”…そんな側面もあると思います。

何しろ、子供は親の背中を見て育ちますからね。それを良い形で示すためには「子供の世話をする」と同じくらいに「心のゆとりを確保する」ことも大切。しかし、母親一人では限界がありますから、最終的に子育ての質を決めるのは“父親のサポート”なのでしょう。

あー。我ながら耳が痛い話ですね。
しかし、本作はそれを痛烈に突き付けてくる作品でした。

母の愛を拒む少年と、そんな彼を怖がる母親。
そこには常に緊張する空気が漂っていました。しかも、想像力を刺激するような演出ばかり。どうしても物語を噛み砕くように観てしまうので、臨場感が半端ないのです。これはかなり神経がすり減ります。

それに、物語は常に母親視点なので、夫との微妙な距離感も肌感覚で伝わってくるのです。特に寝かしつけた子供を父親の都合で起こしてしまう場面は…我が身を恥じたくなるほど。

だから、本作は父親こそが観るべき映画。
特に家庭を顧みていないと自覚している人は、積極果敢に鑑賞し“息苦しさ”を感じ取った方が良いと思います。そして、大いに我が身を振り返りましょう。あー、イタいなあ。

でも、自分を弁護するわけじゃあないのですが“息苦しさ”を感じ取ることが出来れば、まだマシだと思うのです…って、ああ、やっぱり言い訳ですかね。はい。

まあ、そんなわけで。
その場から逃げたくなるほどに痛い物語でした。育児中の鑑賞は本当にオススメしません。特に責任感が強いと、自分を主人公と重ね合わせてしまい、思考の海に溺れる可能性がありますからね。出来ることならば、ある程度の“心のゆとり”を確保してからが良いと思います。

それと、大切なのは、やはり吐き出すこと。
何かを共有する関係が“家族”なので、同じ時間を過ごすことが出来なくても“想い”は共有すべきだと思いました。それは親子でも兄弟でも夫婦でも…同じですよね。
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