Ricola

青春神話のRicolaのレビュー・感想・評価

青春神話(1992年製作の映画)
3.7
刹那的にしか生きられない若者たちは、それぞれ闇を抱えていて、その闇は社会をそのまま反映させたものなのだろうか。


割れた窓ガラス、
割れたサイドミラーに重層的に映る車やビルなどの風景、
投げた茶碗が割れる、といった壊れやすいものを破壊するアクションが、何度か観られる。
彼らの繊細な心を映し出しているのか、はたまた彼らの行く末を暗示しているのか…。

ラブホテルで抱き合う二人。
動きが後ろに映っているビデオの中の男女と同じようになるのも、そのビデオを観てないので無意識なようである。

音楽の入るタイミングが虚無感に彼らがふと浸る瞬間であり、その場面全体の整理をすると同時にエモさも醸し出す。

アザーの部屋の緑のカーテンから、シャオカンの緑のカーテンへと切り替わるショット。
そのまま二人の動きが交互に映し出され、彼らがとうとう間接的にだが接触することになることを予感させる。

走るときや、ローラースケートで滑るとき、彼らを追うカメラはブレたりして不安定である。
しかし固定カメラでのワンシーンワンショットもあって、彼らの心の機微を見逃すまいといった意志を感じる。

せきとめていた排水口の蓋を外し、布を詰めるも水が溢れてしまうシーンにハラハラする。
これはまさに若者たちの刹那的な生き方を表しているのではないか。
感情や自己を抑えようとしても、何にも自分自身でさえも、これらを抑圧することはできずに常に彼らは走っているのである。

暴走する若者たちは、それぞれ自分たちも気づかない闇を抱えている可能性がある。ただその闇に向き合ったとき、彼らは一歩大人へと近づくのだろう。
Ricola

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