茶一郎

ウィローの茶一郎のレビュー・感想・評価

ウィロー(1988年製作の映画)
3.8
 世界の運命が小人族の男に託される大ファンタジー作『ウィロー』は、かのジョージ・ルーカス原作兼製作、第二の『スター・ウォーズ』とも言える(と言ったら色々な人に怒られそうな)超大作です。

 邪悪な女王が支配する世界、その世界を救うという予言を受けた赤ん坊を偶然、拾った小人族のウィローが、その赤ん坊を捨てる事を命じられ、大冒険に出るという物語。
 最近では『バーフバリ』が挙げられる、いかにも「貴種流離譚」的オープニングから、それは裏返り、指輪ならぬその赤ん坊=貴種を捨てに行く『指輪物語』的クエストモノに転換します。
 主人公の魔法使い見習いウィローは、フォース見習いのルーク・スカイウォーカーさながら、途中でウィローが出会う盗人にして剣の達人はハン・ソロ、そのハン・ソロ的盗人が恋する男勝りのお姫様はレイア姫、終いにはC3P-OとR2-D2を想起させる凸凹コンビのコメディリリーフ2人も旅をお供します。
  
 何とも『スター・ウォーズ』変奏版と言えるこの『ウィロー』ですが、本作がロン・ハワード作品である事が非常に感慨深い。というのもロン・ハワードは、元々、子役上がりの役者にしてキャリア低迷期にジョージ・ルーカス監督作『アメリカン・グラフィティ』で再び脚光を浴びた人物、何よりそのロン・ハワードが本作『ウィロー』を経て、演出家として大出世、再びジョージ・ルーカス無き今のスター・ウォーズシリーズ『ハン・ソロ〜』にて監督として抜擢されます。
 ここに『アメリカン・グラフィティ』、本作『ウィロー』そして『ハン・ソロ〜』に続く一本の線を見出す事ができるのです。

 閑話休題、この魔法と希望に満ちた『ウィロー』は、『千と千尋〜』もビックリな豚だらけの画面、失笑を買う老婆魔法使い同士の殴り合いを経て、何ともロン・ハワード的な家族の物語として着地します。
 結局、ミディクロリアンなどという才能のお話に終始した『スター・ウォーズ』より、被差別者のウィローが己の努力とユーモアと知恵をもって世界を救う『ウィロー』の方が、よっぽど感動的な着地と言えるのではないでしょうか。 
 ちなみにウィローを演じたワーウィック・デイヴィス氏は、あのイウォークの中の人、『ハン・ソロ〜』にもしっかり登場するようです。
茶一郎

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