@国立映画アーカイブ

ひとりの映画人（カメラマン）の視点を通して、戦中から、戦後にかけての終わらない自己問答が繰り返される。
戦場のドキュメンタリーを撮っている最中、監督に撮るように言われたのは中国人少年への残酷な行為。
カメラマンは何を撮って、何を撮らないのか。
監督に命令されたらそれにただ従えば良いのか。

その場に傍観者としていた瀬川順一は戦後もその問題を問い続ける。問い続けるのは痛みを伴う行為だし、逃げることもできたのに逃げることはしない。問い続けなければならない、加害者としての責任を感じた。

カメラマン：瀬川順一氏の足跡を追った長編ドキュメンタリー。

とにかく意気揚々と話している時の人間的魅力に惹かれた。

「ラッシュを作るのが、カメラマンの仕事。編集を加えられたら、僕の存在はなくなる。」
深い言葉だ。

観たい観たいと待ち望んでいた一本を遂に見れただけで嬉しかったが、上映後に伊勢監督からこの映画のチラシプレゼントもあり、会社を抜け出して観に行った甲斐があった。

映画制作に携わる人はこの映画を一度は観ておかないといけない。

「キャメラマンの仕事とはラッシュフィルムを作りあげることだ」

という言葉のあとに流れる瀬川さんの撮影したラッシュフィルム。

漂う水の煌めきとその中へ突っ込む手の運動。そしてそこから広がる水の波紋。

カメラと被写体の距離とその間でせめぎ合う撮影の緊張感。自分が見ているようには決して映らないカメラのレンズ（ルーペ）の視点は、まるで魔法のように目の前の現実を変容させることだって出来ることをこのラッシュフィルムは証明してくれる。