作中でも言及されているが80年代版「オズの魔法使い」なブラックコメディ。
NYの(おそらく)アッパーサイドに住むサラリーマンがダウンタウンのソーホーで体験する奇妙な一夜。カフカ的な不条理さがあるが、分かりやすく「ここから変な世界になりますよ」という事ではなく、ハードコアクラブや治安の悪さなどこの時代のダウンタウン文化を見せながら徐々に全てのネジが外れていく感じが怖い。
この映画では、ヒッチコックよろしく事前に絵コンテを書いてその通り撮影したようだが、確かにオフィスシーンでのスピーディーなカメラ移動や、小物(飛んでいくお金や落ちてくる鍵)を見せるシーンなど、何をどう撮るかメリハリがついたショットが多い。
最後に、一晩であんなことがあったのに普通に会社に行ってデータ入力の仕事に戻るところに安心感を覚えるのと同時に、結局サラリーマンにおけるオズの魔法使いでの「家」とは会社のことなのかと思うと皮肉でもある。
