【内なる百鬼夜行】
フェリーニ作品はあまり観たことが無かったので、良い機会とばかりに、劇場に足を運んだ。
ジュリエッタはフェリーニの妻であり、そのままの名前で主演というのも、その時初めて知った位である。
ジュリエッタの眼前に広がる世界は、幻想的で狂気を孕んだ虚構なのであるが、これは正に百鬼夜行の様相である。
フェリーニが、日本における百鬼夜行を知っていたのか、定かではない。
しかし、鬼やあやかしが、人間の心の内を投影したものであるとするならば、ジュリエッタに見えているモノは、紛れもなく西洋の百鬼夜行と言えるのではなかろうか。
ジュリエッタの場合、それは夫の浮気を原因とする、不安と欲求不満からくる破壊衝動のようなものか。
ともあれ、実生活でも、ジュリエッタは夫フェリーニの浮気に悩まされていたそうである。
フェリーニは実生活をも映画のアイデアとし、あろうことか、実際に浮気に悩む妻に、そのものの役を演じさせたとも言われる。
しかし、ジュリエッタはどうだったのだろうか?フェリーニが己れの内面世界としては描いたモノに納得していたのだろうか?
ふと、疑問に思うが、それすら可笑しくもある。