アニマル泉

マンディンゴのアニマル泉のレビュー・感想・評価

マンディンゴ(1975年製作の映画)
4.2
奴隷市場を経営する家族の没落を描くリチャード・フライシャーの問題作。「全てをストレートに描く」というのがフライシャーの方針で長回しを駆使してありのままを描いている。だからとんでもない映画だ。
まず室内が暗い。繊細な照明だ。しかも奴隷たちは褐色なので暗い空間の中で渾然となる。ペドロ・コスタの「ヴィタリナ」の闇を思い出した。目立つのは目だ。しかし奴隷たちは普段は伏せ目がちだ。だからハモンド(ペリー・キング)がエレン(ブレンダ・サイクス)に自分を見ろと命令してエレンの目が闇に浮かび、接吻する場面は官能的だ。「縦構図」が頻出する。トップカットの門扉から邸宅への一本道、螺旋階段を上がってブランチ(スーザン・ジョージ)の部屋までの廊下、奴隷たちが玄関を開けると一本道を馬車が帰ってくる、ラストの銃撃の回廊。もう一つ頻出するのが螺旋階段だ。「縦構図」と「階段」、この二つが出てくると不吉な展開になる。もう一つ不気味なのが「液体」だ。毒入りの酒、釜湯が悲劇を起こす。鏡を使ったミラーショットも不吉に反復される。本作では、人種差別、近親相姦、障がい者、嬰児殺しなどタブーとされていたテーマが詰め込まれている。奴隷市場や奴隷同士のデスマッチに白人たちが熱狂する場面は異様だ。ウォーレン(ジェームズ・メイソン)は獣医に「リウマチの毒を黒人の子供たちに吸わせれば治る」と勧められていつも両足を床に寝そばらせた黒人少年の腹の上に置いている。中盤でウォーレンとハモンドが奴隷たちを売りに出発する場面、奴隷たちの悲惨な別れが長回しワンカットで冷徹に描かれる。マンディンゴ族はアフリカの民族。マンディンゴのミードはヘビー級ボクサーのケン・ノートンが演じている。音楽はモーリス・ジャール、制作はディノ・デ・ラウレンティス。
アニマル泉

アニマル泉