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さらば、わが愛 覇王別姫のbeans045のレビュー・感想・評価

さらば、わが愛 覇王別姫(1993年製作の映画)
5.0
激動の時代を生きた市民達の歴史の記録


1930年代から文化大革命後までの激動の現代中国を生き抜いた京劇役者達を描いた中国映画。
レスリー・チャンが同性愛者の女形(虞姫)という難しい役を演じ切っていた。
そして、その相方覇王(項羽)役を演じる小楼の奥さん(菊仙)を演じるコン・リーが、当時を生きる女性の困難さを体当たりで演じていた、この二人が印象に残る。
権力者が国民党、日本軍、共産党と変遷する中で、翻弄された京劇役者とその家族や仲間達が、彼らが演じる項羽とその妻である虞美人の悲劇のストーリーとシンクロしていて、ぐっと引き込まれて、3時間の長さを全く感じなかった。
項羽と劉邦の物語、現代中国史の両方を知っていると、入りやすい。
今からだいぶ前に、同性愛者を主人公にしたのは、先進的だと思った。
登場人物は京劇で女形を演じる蝶衣、その相方で覇王項羽を演じる小楼、元女郎で小楼の妻菊仙の三人。
この三人を中心に、小楼に対して舞台以外でも思いを募らせる蝶衣と、法的に妻になった菊仙の思いがぶつかり、時に協力し、時に嫉妬し、逆らえない時代の流れに飲み込まれていく。安っぽい昼ドラとはスケールが違う男と女の嫉妬が生々しかった。
女郎の母に捨てられた蝶衣は菊仙に対して嫌悪感を持っていたから。
普通の暮らしをしたい菊仙は小楼を舞台から下ろしてしまう。蝶衣は舞台を続けるが阿片中毒となってしまう。小楼は博打にハマり破産してしまうが、やはり芝居しか無いと気付き舞台に戻ろうとするが、蝶衣の阿片中毒に気付き立ち直らせようとする。権力者が日本軍から国民党、さらに共産党に変わる中で師匠に会い、再びコンビで京劇を続けると決める二人。
文化大革命の嵐が吹き荒れる中、旧体制を象徴するものとして京劇も紅衛兵に吊し上げられてしまう。自己批判で、今までの思いの丈をぶつけ合い、「菊仙は元女郎だ」と蝶衣は告白してしまったことで、小楼はやむを得ず「菊仙と縁を切る」と言わされてしまう。その絶望の末に、菊仙は自殺する。この自己批判のシーンは見ていて本当にやるせない。
10年にも渡る文化大革命が終わり一つの時代が終わったけど、生きることを選ばずに、親友小楼の妻菊仙を自殺に追い込んだことを悔いて舞台の上で、しかも小楼の刀で死ぬことを選んだ蝶衣の運命は、劇中に出て来る「運命には逆らうな、運命を背負う責任がある」というセリフが暗示していたのかなと思う、ずしりと重い。蝶衣と実際に自殺してしまうレスリー・チャンが重なる。変わらない京劇のきらびやかさと、変わり行く中国の背景や歴史との対比が上手かったと思う。
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