あなぐらむ

ドラゴン・プロジェクトのあなぐらむのレビュー・感想・評価

ドラゴン・プロジェクト(2005年製作の映画)
4.0
原題は「精武家庭」。「ジェネックスコップ」や「美少年の恋」などで知られるGEN-Xスター(懐かしい響き)スティーブン・フォンの、アイドルユニット・ツインズを迎えた監督三作目(「エンター・ザ・フェニックス」も彼の監督作)だ。

キャッチコピーにもなっている通り、基本プロットは「スパイキッズ」で、子供達が命がけで父を奪還する事で、親子の絆を深めていくというお話。
スティーブン・フォンの眼差しは驚くほど優しくて、「親子」「兄妹」「孫と祖父」といった肉親への情を非常に丁寧に描き出す。流石香港人。
ご丁寧に敵キャラにも幼い子供(こいつがバカ強い)を設定しているあたり徹底している。
中盤少々ぐだぐだするとこもあるが、見せ場であるクンフーシーンは全編に散りばめられ、そのどれもが高水準。やはりここは動作指導のコリー・ユンがよい仕事をしている。ジョシー・ホーとジリアン・チョンのガチンコ対決なんかも見応えあり。

「精武接骨館」の看板が暴漢に襲われた際に「接骨」の文字が壊れて「精武館」(!)になってしまうなど、細かいお遊びなんかも入れて、楽しいんで作っている感じがよい。
 
ジリアン・チョンはクンフーの筋がいい。本作でもキリっとした表情でアクションをキメている。女子高生ルック(まぁ女子高生役なんだが)や演劇部の発表会で着るアラビア風の衣装など、コスプレっぽい感じもあってジリアン好きな俺は大満足。
相方のシャーリーン・チョイは今回は(も)コメディ・リリーフでジリアンの友達を茶目っ気たっぷりに演じて好アシスト。こらこら高校生がシガー吸っていいのか?
おなじみダニエル・ウー、今回は恋にはオクテだが秘密ありげな青年を演じ、友人の監督作を支えている。
そして何よりもアンソニー・ウォン。自身のキャリアとしてはほぼ初めての本格的なクンフーを存分に見せ、同時に不器用な親父さんっぷりが板についてて独壇場。殆どこの人の映画と言っていい。
あと、なんと驚きのウー・マ(導師様)が出てる! この当たりも映画愛キャストだな。
スティーブン・フォン、パンフの解説にもあったが、監督でありながら「俺が俺が」とならずに一歩退いた位置で、全体のバランスを考えながらキャラクターを演じており大人だなぁと。この人、体操選手だったのね。道理でアクションが綺麗+巧いわけだ。

観た後に懐かしさと温かさ、そして香港映画への愛を感じる良品。