ひろ

東京暮色のひろのレビュー・感想・評価

東京暮色(1957年製作の映画)
4.7
監督・小津安二郎、脚本は監督と野田高悟の共同執筆で製作された1957年の日本映画

この作品には驚いた。本当に小津作品なの?って思うくらい暗い。劇的な展開もらしくないし、こんなに重たい作品は他にない。野田高悟の反対を押しきって映画にしたのがよくなかったのか、一般的には小津安二郎の唯一の失敗作と言われている。

しかし、あまりにも他の作品と違うテイストだからこそ頭から離れない。ゆったりと小津調を楽しめる作品ではないが、これはこれでインパクトがあっていいと思う。婚前の中絶や夫婦の別居、子を捨てた母との再会、非業の死といった時代的にも過激な内容だったと思う。

失敗作と言われているが、キャストは小津作品の中でも最高レベル。原節子、笠智衆、杉村春子といった小津作品に欠かせない俳優に、宝塚のスター有馬稲子や戦後最高の大女優・山田五十鈴といったオールスターのようなキャスティング。

生涯独身だった小津監督だけど、彼が最も愛した女優である原節子の演技を観ていると、彼女は小津監督にとって娘であり、妻であり、母だったんだなって伝わってくる。そういうことも感じながら、豪華なキャストの演技を観ていると、失敗作だとは言えないな。
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