yukihiro084

ザ・ファイターのyukihiro084のレビュー・感想・評価

ザ・ファイター(2010年製作の映画)
5.0
実話ものの映画のエンドロールで、
よくモデルになった本人の映像が流れる。

けっこうなケースで、
演じた俳優とはやっぱり全然違うな、と
思うことが多い。
もちろん、モノマネではないので
似ている必要もないのだが、
やはり少しくらい似てて欲しい。
せめて背格好とか。髪の色とか。
俳優が演じたキャラクターに
感情移入している時とかは、
少し微妙な気持ちになったりする。

今作もエンドロールにご本人が登場。
思わず吹き出す。そっくり過ぎる。
見た目もそうだが、その雰囲気も、
そのキャラクターも、そのウザったさも。
クリスチャン・ベイル、いやー恐るべし。
もうあそこまで寄せてゆくのは異常だ。

エイミー・アダムス。
エイミーは何者にでもなれる稀有な
俳優さんだ。とても自然に。
この人、元々こんな人だったよね?と
観るものに思わせる。
今回も、パッとしない町の、
パッとしない町のおねえさんを
いいバランス感覚で演じている。巧い。

ザ・ファイター。
これは、家族の物語。
ボクシングの映画のようだけど、
実はこれは、家族の物語。
ちなみにロッキーも、ボクシングの
映画のようで、人生についての物語だけど。
家族の物語って言うとキレイ過ぎるか。

これはかなりクレイジーな家族の、
クレイジーなホームドラマ。
もう、舞台になるローウェルなる町の
雰囲気や住民全体からして、おかしい。

家族も紹介しますね。
問題児の、と言うか、町で一番ヤベェ
有名人のトレーナーの兄と、
過干渉で目先のお金だけが目的で、
主人公のボクサーとして未来像とか
身体の心配とか一切考えられない
興行師の母と、やたら多い姉妹たちと、
全米では無名だが、地元の町では
有名なこのファミリーに、無駄に群がる
素性のわからない人たち。

そして、主人公のミッキー。
あぁ、ミッキー。
君の人生に僕がタオルを投げてあげたい。

いや、生まれる場所は選べないって
言うけど、さすがに、これはヒドイ。
ボクシング以前の話なんだよね。
人が人らしく生きて行く環境じゃないの。

ほらあれだ!(アイ,トーニャ)に近い。

こんなひどい環境下でも、
映画の主人公になれるヒーローは
生まれる。それはそれで夢がある。

エンドロール、クリスチャン・ベイルが
演じた本物の主人公の兄が話し出すと、
劇場内に小さなどよめきが起きる。
それは、想像以上の主人公の兄の
キャラぶりと、クリスチャン・ベイルの
役作りの凄まじさというか、呆れ返った
ような。そんな、どよめき。

昔、妻に
『もっと普通の家がよかった。』と
ポツリと言ったことがある。母が聞いたら
悲しむかも知れないが、本心だった。
妻は、僕をたしなめることなく、
『そうだね。』と言い、『でもだから、
今のあなたがあるんじゃない。』と言い。
『よく頑張った、yukihiro』と
名セコンドのように僕に言う。
まだ、ラウンドは残ってるぜ、と
言わんばかりに。

なので、僕の好きな一本なのです。
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