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ブルース・ブラザースのはるのレビュー・感想・評価

ブルース・ブラザース(1980年製作の映画)
4.5
しばらくぶりに見直す今作は、初見のTV放映時の「吹き替えが微妙」という印象が消え失せるほど何度も観てきた。折に触れて観返したくなるし、古びないことに気づかされて、その都度笑い、そして感動してしまう。やはり楽曲自体の魅力と、超がつく有名ミュージシャンたち(ジェームス・ブラウン、アレサ・フランクリン、レイ・チャールズなど)のパフォーマンスがあることも大きな要因だろう。もちろん主演2人のトボけたタッチも大好き。

刑務所から出所したばかりのジェイクとその弟のエルウッドが、幼少期から世話になった孤児院の窮地を救うために「バンド」で稼ぐことを思いつく。かつての仲間を集めてトラブルを乗り越えていく過程では基調になっているコメディとアクション、そして何と言ってもミュージカル、演奏パートが魅力的。

さてネタバレ。
主演のジョン・ベルーシは初見時に既に故人で、ダン・エイクロイドはその前に観ていた『ゴーストバスターズ』での印象が強かった。ベルーシの面白みは年を経るごとに味わいが増すし、SNL時代の映像なども今ではリーチしやすいので、当時の彼の持ち味ややりたいことがわかる。それが今作ではスラップスティックでバカバカしいのに抑制のきいた乾いた笑いで貫かれていると思う。オフビートという表現も出来るかもしれない。それは監督のジョン・ランディスの持ち味でもあるだろう。

冒頭ではシカゴのくすんだ朝の工業地帯が映されて、官庁と思しき建物の脇で合衆国国旗が掲揚される。良い導入だなと思う。出所したジェイクを迎えたエルウッドたちブルース兄弟がまず向かうのが孤児院であり、そこでシスターから依頼を受け、その後ふと訪れた教会で啓示を受ける。物語としては信仰心や救済がテーマになっていることがわかるし、彼ら兄弟が今作で対立するものが何かということ。
もちろんそんなことを考えなくても今作はすごく面白いけれど、公民権運動、USでの黒人音楽の歴史なども含めてとても良く考えられた物語になっていると思う。それをこうしてバカバカしくお祭り騒ぎしているから、この作品は本当に素晴らしいのだ。
あの兄弟が何と対立し、それらを連帯によって蹴散らしながらたどり着いた場所。それもまた皮肉で面白い。

ちなみに今回初めて「レイの店のギターを盗もうとして撃たれそうになる少年は、『ダイハード』のリムジン運転手役の彼だ」と気付くことに。
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