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メメントの10000lyfhのネタバレレビュー・内容・結末

メメント(2000年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

結論を先に:
20代でこれ作ったノーランは天才.作品はそれとは切り離して評価する.物語構成が唯一無二で,初めて観る時,観てる最中はめっちゃ面白いが,観終ってしまうとどうでもいい感が強い.手段が目的となっている作品の典型

要点まとめ:
- 映画は「実際の時系列」の最後から始まり,カラーのシーケンスが過去へ遡る.白黒のシーケンスが,「実際の時系列」の最初から始まり,「実際の時系列」通りに進む.両者が数分ずつ入れ替りながら映画は進行する.映画の最後で両者が接続し,オーディエンスは「実際の時系列」に沿った流れを理解する(「映画の時系列」を横軸,「実際の時系列」を縦軸にした,わかりやすいチャートが英語版 Wikipedia にある)
- カラーシーケンスが本作の肝で,各シーンの開始時,前向性健忘の主人公(レニー)は,自分がどこにいて何をしている最中なのかがわからない.オーディエンスは彼と共に前向性健忘を擬似体験する(本作のユニークな視聴体験)
- 白黒のシーケンスは,カラーのシーケンスを区切る役割と,物語の背景を説明する役割がある.レニーは,前向性健忘を発症する以前の長期定着済み記憶に基づき,彼が出会ったやはり前向性健忘を持つ人物(サミー)について話すが,映画の最後で,サミーの物語は実はレニー自身の物語であると判明する(サミーが最後に登場するシーンの最後のコンマ数秒がレニーに入れ替わっている)
- オーディエンスは,映画の冒頭で描写される,レニーが「友人」テディの射殺に至る経緯を推理しながら映画を観る.映画の最後(白黒シーケンスとカラーシーケンスが結合する地点)に判明する事実は以下の通り:テディは,レニーの本来の復讐対象(妻を殺害した犯人)ではなかった;テディに利用されたことへの報復として,レニーはテディを,後に自分が復讐対象と誤解し殺害に至るよう,手がかりを調整した(ポラロイド写真の焼却,後に自分自身をミスリードするためのメモ作成等)

もっかい結論:
各カラーシーン開始部の未知のシチュエーションに放り出されたような感覚(前向性健忘の擬似体験)と,映画の冒頭の射殺シーンに至る動機/事情の推理と,断片的情報をつなぎ合せ整合性ある物語の再構築が,本作独自の面白さ.これを 1回めに体験するのは本当に面白い.が,この面白さだけのために前向性健忘や特殊な時系列構成らが使われている感も否めず,主人公レニーも孤独な犠牲者である一方で結末で中途半端な悪者と判明し感情移入は難しく,物語自体も絶望的で暗い(同じコンセプトで単純に楽しいコメディは作れないものなのか?).人にも 1回楽しんで通過することは勧めるが,個人的に好きと言えない作品
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