ひろ

アルゴのひろのレビュー・感想・評価

アルゴ(2012年製作の映画)
4.0
1979年のイランアメリカ大使館人質事件を題材とし、製作・監督・主演ベン・アフレックによって映画化された2012年のアメリカ映画。

第85回アカデミー賞作品賞、脚色賞、編集賞を受賞した。

ジョージ・クルーニーとグラント・ヘスロヴの映画製作会社が温めていた企画に手を上げたのが、「ゴーン・ベイビー・ゴーン」、「ザ・タウン」で映画監督としての才能を示したベン・アフレックだった。小説原作を自ら脚本を書いて監督した前2作と異なり、すでに完成していた脚本を監督した。しかも、実話ベースというのも初めての試みだ。次代のクリント・イーストウッドと言われているのも納得の内容だった。作品賞も受賞したのに、監督賞にノミネートすらされてないのは不可解だ。アカデミー賞はたまに信用ならない。

クリントン大統領が真実を明らかにするまで隠されていた救出作戦。ニセSF映画をでっち上げて、イランから同胞を救出するという、まるで映画みたいな実話だ。全編に渡って緊張感がすごい。監督の演出力の高さもあって、場面毎にタイムリミットがある展開には息をつく暇もない。イラン側、CIA本部、カナダ大使館といった三者三様の切迫した状況を描いているから手に汗握る。当時の映像を使ったり、細部まで再現したり、当時の音楽を使ったりと、監督のこだわりが伝わってくる。ベン・アフレックは主演俳優としてもよかったけど、もう監督としての手腕の方が際立ち始めている。

作戦の内容はユニークだが、状況は予断を許さないシリアスな展開だ。そんな作品の中で、アルゴ作戦を支える業界人の二人を演じたアラン・アーキンとジョン・グッドマンの存在が、よいガス抜きになっている。シリアスを妨げずユーモアがあるという絶妙な綱渡りを難なくしてしまう。この二人は間違いなく名優だ。名脇役なくして名作なしだ。

本当に映画として素晴らしい完成度を誇る作品だと思うが、やはりこれはアメリカ人が作ったアメリカのための映画に他ならない。反イラン映画と言われるのも仕方なく、これを観たイラン人は不愉快になるだろう。そんな映画を観て、アメリカ最高なんて日本人が言ったら、もうこの作品はプロパガンダ映画でしかなくなる。怒ったイランでは、イラン目線の「アルゴ」の製作が決定している。映画が国の優劣を決めるものであって欲しくない。あくまでアメリカ目線の映画だと認識して観てもらいたい。物語を素直に楽しむなら、これは本当に面白い映画だ。娯楽映画として楽しんでもらいたい
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