結湖

SHAME シェイムの結湖のレビュー・感想・評価

SHAME シェイム(2011年製作の映画)
3.5
エロスを求めて見ようものなら、手ひどいしっぺ返しを食らう、エグくて、滑稽で、悲愴で、孤独で、痛々しい寂しさがが突き刺さってくる映画。
全編、心情を語るモノローグは一切なく、少ない登場人物と少ない台詞と細やかな演技と演出だけで語られる静かな映画なのに、見た後は誰かに語らずにいられない。
主人公ブランドン(マイケル・ファスベンダー)は性依存で、その妹シシー(キャリー・マリガン)は男性依存。どちらも重度で心の闇がとても深い。つまり、適切な人間関係を構築できないコミュニティー障害をかかえている。
二人がそうなった理由は一切描かれていないが、ブランドンは妹であるシシーに強い思慕(性愛を含む)を抱いているのは明白で、逆にシシーはそれをわかってブランドンを利用している節がある。
お互いが強い依存関係にありながら、ブランドンがシシーを拒絶するのはタイトルになっている恥からくるものだろう。
おそらく、ブランドンがそれ(性そのものを含め)を強く恥だと思う理由があるはずだが、描かれていないために推測するしかない。
ブランドンの性交は痛ましく描かれ、まるでなにか罰をうけているようにも思えます。たぶん、自傷と同じ意味を持つんじゃないかと。
そして、最後のブランドンの悲愴な嗚咽が切ない。その存在がなくならない限り、彼の渇望は終わることはないのだから。
さらに、秀逸だなって思うのは見終わってからわかるのだが、冒頭のタイトルが入るまでのカット。
あれほどたくさんの情交があっても、彼の横には誰もいないのだ。
ひどく美しくて、絶望的な孤独を表した見事なショットだと思う。
映像の綺麗さもあって、個人的にはとても好きな映画に入るが、お薦めするには躊躇してしまう。
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