海

千年女優の海のレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
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夢を見た。どこか遠くへ向かう船に乗っていた。天気は曇りで、今にも雨が降り出しそうで、時間もろくにわからないくらい暗くて、すぐそこにあるのが海だと知らせるのは波のぶつかる音だけだった。冷たい風が剥き出しの手と顔を刺して痛い。後ろから、肩にコートをかけられた。真っ黒で分厚いコートだ。振り向こうとすると横にあのひとが立ってわたしを見ていた。どうしてか「良いコートですね」と口走った。かれは微笑んで、近所に見つけた古着屋で買ったんだと、遠い国の名前を言った。どこへ行っても、あいかわらず中古が好きなんだなぁと思って嬉しかった。「いいところ?」と聞くと、「端っこだから」と答えてくれた。内陸じゃないってことだ、とわかった。それから一言も話さずにただ、荒れた暗い海をみている彼の横顔をわたしはみていた。もう一生会えなくてもいいから、ただ、顔が見たい。毎日が終わって、夜がくるたびに、そうおもってしまう。
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