引退して数十年になる「伝説の女優」(直接のモデルは原節子ですが、高峰秀子など邦画黄金期の何人かの女優のイメージも混ざっています)を訪ねる、という導入から始まるアニメーション。
映画的といえばあまりにも映画的なシークエンスが、何重にもオーバーラップするなかで、女優の秘めた恋と「秘密の鍵」をめぐる物語が展開されます。
現在と半過去と過去が、入れ子状に展開するナラティブはひじょうによくできており、すんなりと物語にはいりこめます。こうした複雑な話法は今敏の特徴でもあるのですが、ただ、とちゅうからその入れ子構造がワチャワチャと煩雑になり過ぎ、物語のおもしろさをスポイルしている感もありました。
ぼく自身は、傑作には、結果的にある種のシンプルさが必要だと思っているので、ものすごく好みの作品というわけではありませんでした。
しかしながら、たった4本しか映画を撮っていないのに、抜群のアイデアと、オリジナルなスタイルをもっていた今敏は、あらためて天才だったと思わざるをえませんでした。
「パーフェクトブルー」同様、ハリウッドにパクられる未来が目に見えるようですw