志麻凛

千年女優の志麻凛のレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
4.0
新年度に入り、何かを追いかける節目として相応しい4月の始め。それにピッタリな、本作を鑑賞。

「若さと老い」が、「月の満ち欠け」で象徴してるのは、鍵の君曰く、“14日の月の方が好き”に示唆されてるのは明々白々。また、千代子が“彼を追いかけてる自分が好き”という語りでは、先に鍵の君が理由で申した“まだ明日がある”に帰着するのがたまらない。これらを総括した時、恋を追い求める若々しさが、恋の方程式の解として褒められるものだろう。

それゆえに、本作で素晴らしいと思ったのは、月が象徴的に用いられてるのにも関わらず、恋愛作品でベタに出てくる、太宰が綴った「月が綺麗ですね」を彷彿させる台詞が、一切出てこないこと。月をあくまで、追いつきたくても出来ず、けれど自身を常に照らしてくれるものとして、顕在化されてるのが、本作らしい。

本作で月以外で印象的なのは、やはり千代子が走る際、時代劇やSF、街中など、まどマギOPのまどかちゃんの如く、背景が廻っていく構成。現実は小説より奇なりという有名な言葉があるが、女優として生きる彼女が、現実の恋に心酔するさまを意識的に魅せてるのが最高。それが、彼女のファンでもある立花が、登場人物と化す展開で、憧れの具現化が存在することを裏付けてるのが、また良きかな。

今敏監督作品の中でも、屈指に好きなので、定期的に見ていきたい
志麻凛

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