ウサミ

コクリコ坂からのウサミのレビュー・感想・評価

コクリコ坂から(2011年製作の映画)
4.3
好きな映画でした。
映画全体の雰囲気がとても心地よく、静かながら大変楽しむことができました。
夜中に一人で観たのも影響したのか、この単調な物語にツボを押された感覚。

少し単調、特に興味深いストーリーではありませんでしたが、澄み切った空気感と、僕が生きた時代とは全く違う風景や人々への興味と、経験してないのに懐かしいという不思議なノスタルジー。

当時の学生が持つパワーやエネルギーは、現代とはまるで違いました。

高校のとき僕が所属してたテニス部のコートが壊されて、本校舎の耐震工事の間の仮校舎が建った時も、あーそうなんだくらいにしか思わなかったんですよね。

映画の重要舞台となるカルチェラタンでは、情熱を一身に捧げるパワフルな学生の姿が描かれています。
ゴミだらけの不潔な空間に積み上がる意味不明なガラクタたちという男のロマンを感じながらも心を掴まれました。
物質的に満たされていなかったからこそ、その隙間を心の充実で満たそうとする姿に憧れを感じました。


少し文句があるなら、あまりにテンポが良すぎた。
この映画、よくわからないことが割といっぱいあって、それは分からないまま進行していく。
でも分からないのは特に苦痛ではなくて、それを想像したりするのが楽しかったり、それ以上に映画の雰囲気を感じるのが心地よかったりで、そこは文句なし。
ただ、ならばもっともっと余韻に浸らせてくれてもいいのでは?と感じた。
海の見える古臭い街並み、夜の商店街、先述したカルチェラタン、古い型のバス、港に着いて汽笛を鳴らす船、などなど。それらをもっと映して欲しい!もっと意味のない時間が欲しい!
あまりにそれらの雰囲気に浸る時間がなかったのがもったいなかった。
もっと"退屈な映画"にしてくれた方が、より楽しめたんじゃないだろうか…?


ただ、鑑賞後、素直に「あーこの映画好きだなぁ」と思わせてしまう何かがありました。

久々に、3年ぶりくらいに観直しました。
やはり好きだったな。
映画の全体像がわかる分、映画の余白の少なさをやはりもったいなく思いました。とはいえ、へんにメッセージ臭くならない良さもあるのかもしれません。
「好き!」を伝えるロマンスなシーンも、かなりアッサリしていました。しかしそれが良い。決してウェットな映画になり過ぎない心地良さがありました。
映画のカタルシスや主人公の心情を、脚本ではなく映像で描くことが出来ていれば…と、素人目に思いました。しかし、2回目鑑賞の方が、1回目より遥かに楽しめました。
ウサミ

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