あーや

仁義の墓場のあーやのネタバレレビュー・内容・結末

仁義の墓場(1975年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

4月からhboがAmazonプライムになりましたね。ゲーム・オブ・スローンズやらSATCやらが観邦題ですよ。ですが!私が4月一発目で観たのは「仁義の墓場」です。渡哲也の東映一発目の作品ですね。師匠の会で本作を知ってからもう観たくて観たくて……。「仁義なき戦い」と同じく深作欣二監督作品です。あちらは仁義を通すあまりボロボロになる文ちゃんが主演でしたが、こちらは仁義なんか全く通さない渡哲也が主演です。ブラックコメディを目指した作品とのことですが、コメディすぎるよ!!任侠物でこんなに笑うとは。ヤクザ連中の剣幕は立派だし、真っ赤な血飛沫もバシュバシュ飛んでいるのですが(でも誰も彼もしぶとくてなかなか死なない)渡哲也があまりにぶっ飛びすぎてね。本作は戦後に実在したヤクザ、石川力夫の生涯を描いた作品です。ドキュメンタリータッチのインタビューで始まります。石川力夫を知る人に深作欣二監督が自らインタビューしていますよ。そして映画が始まるのですが、まず本作のヒロイン地恵子(多岐川裕美)ね。彼女、いきなりレイプされます。窓から入ってきた力夫(渡哲也)に「何にもしねぇよ」と言われながら何もかもされてしまいます。そして地恵子はあろう事か、そんな力夫に惚れました。勿論夕子みたいな可愛さは皆無ですよ。地恵子は惚れた弱みで力夫のために何もかも捧げます。力夫に言われて芸者として売られたり、身体を売って力夫の保釈金を払ったりしているうちに持病の結核は酷くなるばかり。そんな彼女が惚れた力夫はというと、自らが組員である河田組の親分(ハナ肇)をぶった斬ったことで10年間の関東所払いとなる。しかし大阪に行く金もないので地恵子を芸者に売ってしまうのですね。ろくでなしですね。そして大阪に行った力夫は釜ヶ崎の娼婦(釜ヶ崎のマドンナ芹明香♡)にヘロインを教わり、立派なシャブ中になるのでした。これで救いようのないろくでなしになりましたね!そのワンシーンがこの画です。すごいですね。シャブ中の芹明香&渡哲也、彼らの横でお祈りをするおじさん。んー、地獄ですね。そして1年6ヶ月後、力夫は同じくシャブ中の小崎(土色の顔の田中邦衛)を連れて東京へ戻ってくるのです。10年間所払いになってたんとちがうんか?!と思うのは皆同じで、優しい親友の今井(梅宮辰夫)に匿ってもらっていることがすぐにハナ肇にバレます。そりゃそうだ。それで大人しく大阪に帰ればいいのですが、力夫は帰りませんよ。何と彼は今井を襲ったのですね。なぜ今井を襲ったのかサッパリわかりません!しかも一回目で殺し損なったので、一週間後に戻ってきてトドメを刺すのです。もう力夫は一体何をしたいのかちっとも分かりませんね!ところがその後、潜伏先がバレたため力夫と小崎は警察と河田組と今井組から襲撃を受けます。警察と力夫は発砲、ヤクザは投石、邦衛は「ヤク~~~~!!!!」。えらいこっちゃです。結局力夫と小崎は捕まるのですが、結核の地恵子が身体を打って保釈金を支払います。ところが地恵子は自分の結核がどんどん酷くなり、シャブを打つ力夫を横目に自殺してしまいます。彼女は一体何が楽しくて生きてきたのでしょうか···。しかもいつの間にか彼女は力夫と籍を入れていたそうです。えー!いつ入れたのよ!しかし「今となっては知る由もない」のです。地恵子を亡くした力夫は失意の中、火葬場で地恵子の骨を拾いながら涙するのですね。これが力夫の流した唯一の涙です。そして力夫は今井の奥さんに今井に手を合わせたいと懇願して拒否されたあと、ハナ肇のもとを訪れ、一家を立ち上げたいからビルと金をよこせと要求します。地恵子の骨をポリポリ食べながら!!骨食べてるからポリポリと音を立てとるんですよ!ヤクザみんなドン引きー。私もドン引きー。見事な脅しが通ったあと、力夫は墓場へ行くのですがそこで河田組に襲われます。しかし彼は脅威的な生命力で死にません。ところが警察に捕まります。そして投獄された力夫は刑務所の屋上からぴょーんと飛び降り、脳みそぶちゃー&関節ぐにゃり&血の大海原という凄まじい自殺を遂げるのでした。彼が監獄に残した辞世の句は「大笑い 30年の バカ騒ぎ」。そして彼が自らの墓石に掘った文字は、自分の名、親友の今井の名、地恵子の名、そして「仁義」という文字でした。へ?!「仁義」??!
というなんともハチャメチャなエンディングでした。しかしこの石川力夫という男が実在していたのですからビックリですよね。こんなにやることなすこと全て一貫しない人は絶対にお友達いないわ!と思うのですが、親分であるハナ肇や親友の梅宮辰夫、生涯の女になった多岐川裕美に至るまで彼は結構慕われているのですよね。第三者には解らない力夫の人間的な魅力なのでしょうか。正しく「今となっては知る由もない」です。この作品は深作監督のナレーションで何度も出てくる「今となっては知る由もない」がキーワードでした。この石川力夫という男はあまりに突拍子のない行動を取りまくったため「今となっては知る由もない」で片付けるしかどうしようもないのですね。わかります。
ちなみにWikipedia(この作品のページはしっかり書かれている。作品が愛されている証拠ですね)曰く、深作監督は釜ヶ崎ロケを敢行した日活ロマンポルノの名作「㊙色情めす市場」をスタッフに16回見せたそうですが…まじかよ。よくもまぁあんなにむんむんと体液やら何やらの悪臭が漂う作品を16回も……。夏だったら最悪ですね。でもそのおかげで釜ヶ崎にいる芹明香をまた観れたからいいのかな♡あーーー、面白かった。さて。セックス・アンド・ザ・シティ観よ。
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