こたつむり

極楽島殺人事件のこたつむりのレビュー・感想・評価

極楽島殺人事件(2008年製作の映画)
3.7
♪ 祭りが始まり 炎はまた消えてゆく
  深い嘆きノ森 ひぐらしのなく…

南の海に浮かぶ極楽島。
今から、この島は消失するッ!
“死”よりも恐ろしい恐怖が蔓延るのだッ!

…てな感じの韓国産サスペンス。
湿度が高くて肌触りが気味悪い物語でした。何よりも素晴らしいのが最低限の説明に留まっていること。歯応えがあるので、観察力と想像力で読み解くのが楽しいのです。

例えば、村民の顔が汚れていること。
例えば、呪われた島と上陸時に言われること。
例えば、注射をした後に解熱剤を探すこと。

どれもこれも伏線であり、布石でもあり。
意味のない描写はありません。上島竜兵さんのようなコミカルな村民も“存在するのに意味がある”ので、表層で判断するのは危険です。

また、時折に示唆されるのはジャンル越え。
ある意味で“禁断の荒業”が目の前でゆらりゆらりと揺れるのは、知的好奇心を刺激する演出。鼻息が荒くなるのは確実でした。

但し、その反面。
世界が入れ替わらないときは落胆も激しい可能性があります。ミステリっぽい題材は期待値低めが現代の常識。「どうせ○○のパクリなんだろ」くらいの姿勢が一番良いと思います。

あと、名前と顔が一致しないのは…。
これは僕の記憶力が悪いのか、それとも韓国の名前になじみが無いだけか。この辺りは、もう少し説明があっても良かったと思います。血縁関係の繋がりも分かりづらいので。

ただ、これも翻せば長所にもなります。
というのも、韓国の俳優さんたちはよく知らないので、誰が探偵で誰が犯人かが一瞥しただけでは分からないのです。「あの人は大御所だから重要キャラだな」なんてメタ的要因で先が読めてしまうのは面白さ半減ですからね。

まあ、そんなわけで。
韓国の離島はヤヴァイという噂を裏付けるサスペンス。着地点は予測可能ですが、その背後にある“何か”を想像することが出来ればググっと奥行きが生まれる作品です。上級者にオススメ。
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