しゅん

限りなき舗道のしゅんのレビュー・感想・評価

限りなき舗道(1934年製作の映画)
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当時松竹の監督陣が誰も撮りたがらず、「これを撮ったら自由に撮らしてやる」と謂れて末席監督だった成瀬が半ば無理に引き受けたという映画らしいのだが、なかなかどうして、見所の多いサイレント映画だった。冒頭の銀座の街を歩く人々を細かいカット割りで映したシークエンスがまず素晴らしいし、車や扉や新聞のモチーフで物語を繋いでいくところにもいちいち説得力がある。セリフ(タイトル)によって場面転換する演出も見事。思い込みの強い男(全ての悲劇の元凶)にはひたすらイライラするし、最後も全然解決になっていないところを強引に終わらせた感じなのだが、カメラと忍節子が双方からグッと寄るシーンには異様な迫力が宿っていて全てを圧倒する。「脚本がひどくても、むしろひどいほど優れた映画は成立する」というゴダール理論を期せずにして実践してしまったような作品。
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