群青

ベンジャミン・バトン 数奇な人生の群青のレビュー・感想・評価

3.5
小さい頃は永遠に生きたい、とか若いままでいられたらなぁとか思っていたけど、しっかり考えられるようになったら、死に近づいていくのは自然な事で、老いていくことが素晴らしいことなんだと気づかされる。

全ての生命は生まれた瞬間から死という終着点に向かってずっと進んでいく。
愛する人やその子どもを作りながら。
そんな普遍的なテーマをベンジャミンという若返っていく男の生き様を通して描く。

デビッド・フィンチャー監督の青みがかった色彩が非常に美しい。
人によっては淡々としている、と感じるだろうが、自分は全く退屈しなかった。てか160分もあるのかよ!全然感じさせないね!まるでベンジャミンの育った老人施設のような時間の流れだ!

幼い、ではなく老いていた時代を老人施設で過ごしたからこそベンジャミンはそこで独特の人生観、死生観を生む。彼がお世話になる船の船長も強く影響しているだろう。はらわたが煮えくりかえるが迎えが来たら行くしかない。これなんだと思う。

彼の人生は人とは違った。だから普通ならできるようなことができない。それは愛する相手のそばにいられること、彼女と同じ年代を生きることや、子供と一緒に歳をとることだ。

最初はそれに悩む。が、若返った先に待っている展開が、そうではないと確信させてくれる。
進む時間は違っても。同じ時を過ごせなくても、彼が生きた一生で育んだ気持ち、心、愛は不変だった。彼が最後に愛する人を見つめる時、進む時間が違うからこそ、その大切さがより強く伝わってきた。

このラスト20分くらいはもう切なすぎてやばい。その切なさそのまま今まで出会ってきた人を振り返っていく。
もうなんなんだろう、自分の人生ってなんなんだろう、と考えさられる。

そうだ、歳は違っても、老いても若返ってもその時その時感じる心だけは同じにできる。愛することはいつでもできるのだ。

人生とはなんて尊いものなんだろう。自分もこんな風におおらかに生きたいと思った。
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