あーさん

ダージリン急行のあーさんのレビュー・感想・評価

ダージリン急行(2007年製作の映画)
3.9
初ウェス・アンダーソン。

「グランド・ブダペスト・ホテル」を夫が観ているのを横で”珍しくヘンテコなの観てるな〜”と思っていたので、今作もそれほど期待せず。。

が、、嬉しい誤算!
好きな感じだった〜

父親の死後、疎遠になっていた三兄弟が長男フランシス(オーウェン・ウィルソン)の召集で久しぶりに再会。
”心の旅”と称した『ダージリン急行』に乗って巡るインド旅行(実はある目的があるのだが…)を通して、少しずつ心のわだかまりが解けていく、、というロード・ムービー。

乗り遅れそうになった列車に走って飛び乗るシーンから登場した次男ピーター(エイドリアン・ブロディ)を見た時、あれ?ジョン・レノン⁈と思ってしまった。。
そして列車の中で待ち受ける三男ジャック(ジェイソン・シュワルツマン)はまさしくジョージ・ハリスン!じゃあ、、ちょっと無理があるかもしれないけど長男フランシスはポール・マッカートニー?一人足りない…と思っていたら、フランシスの部下のブレンダン(ウォレス・ウォロダースキー)がリンゴ・スターに似ている!→無理矢理!笑
こじつけかもしれないけれど、一躍有名になった後、一時インド的なものにハマっていたビートルズのことを思い起こした。もしかして、それになぞらえてるのかなぁ…と。 ちと、深読みし過ぎか?

列車の旅は珍道中。
三者三様に変わり者なので、あっちでこっちで騒ぎを起こす。。

会わない間に起こったことを、一人がどこかへ行くと二人でヒソヒソ話したりするのが面白い。

ケンカしたりドタバタやっている三兄弟。色々やらかした為に列車を降りる羽目になるのだが、ある出来事を境に彼らの心に大きな変化が起きる。。
それは多分”人が死ぬ”ということの捉え方をあくまでも自然に、肌で感じることができたからではないだろうか?
東洋の全く違う価値観に触れた時、彼らの中で父親の死も人生の意味も、全ての謎が解けたように感じたに違いない。私にはそう思えた。

軽いタッチで描かれているが、出て行ってしまった母親との再会のくだりは、描かれていない余白を想像するしかなかったが、ちょっと切なかったなぁ。。

でも母親の残してくれた言葉、

朝起きたら、
この美しい場所で楽しく過ごすこと、後悔は捨てること、将来の計画を立てること、、

この3つはきっと三兄弟のこれからの道標になってくれるだろう。

独特の世界観の物語の中に、気づいたらフッと人生を感じさせるあたり、なかなかのテクニシャンだな。

マーク・ジェイコブズ+ルイ・ヴィトンの衣装(バッグ)、音楽も◎

私もいつか姉妹で列車の旅に出てみたいと思った。。



追記

特典映像で撮影の舞台裏をやっていたが、細かい所に凝りまくっていて、さすがウェス・アンダーソン!
列車に描かれた象は一頭描くのに1日がかりで500頭は描いたというから気が遠くなる。。
インドのジョートプルのデコトラ塗装職人達が施した列車の絵がそれぞれ物語のシーンになっていたり、そこかしこに仕掛けがしてあるのがウェス・アンダーソンの世界のリアリティに繋がっているのだなと思う。素晴らしい!

ウェス・アンダーソン、、
若い監督かと思いきや、同年代だった。撮影中に白いスーツを着ているあたり、只者ではないなぁ。。
この人の頭の中を覗いてみたい。
他の作品も観てみたいと思った!
あーさん

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