すぽんてぃにあす

黒部の太陽のすぽんてぃにあすのネタバレレビュー・内容・結末

黒部の太陽(1968年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

171人の尊い犠牲、それを忘れてはならない。

黒部ダムには幼少期に家族で一度。
こちらに移り住んでからは今の連れ合いを含めて2回、足を運んでいます。
道中の色々な乗り物もテンション上がるし、ダムの上から真下を覗き込むのは引き込まれるくらいに好き。
そんな一種の観光スポットでしかなかった黒部ダムだけど、その歴史の作品をやっと鑑賞してみた。

くろよん建設という名の自然への挑戦、人間が豊かに暮らすために。
そのために山に穴を開ける、一見烏滸がましさすら感じてしまうが、その上で我々は成り立っているのだと思うと何も言えるわけがない。
しかし犠牲なくして得られるわけがなかった。
始める前から分かり切っていた上で、決死の覚悟で戦いを挑んだのだ。

着工し始めから順調な前半、作業風景を眺めるだけでも色々と楽しめた。
現代に比べると違いはあるのだろうけど、掘削の仕事はやはり凄い。
見る見るうちにトンネルが出来上がっていき、人間の知恵も捨てたものではないなと感心する。
それも束の間だったのだが。

破砕帯との遭遇、その脅威に恐怖する。
分かり切っていたことなだけに、どうしても打ち勝たなければいけない信念も窺えたが。
実際はもっと辛かったのだろうなと思うと余計に身震いした。

それらの辛く険しい描写を和らげるために、様々な人間模様が描かれていたのかなと勝手に推測した。
石原裕次郎をはじめとする、家族や恋人等の人間ドラマ要素。
なくてもいいかなとも思えたけど、一才を取っ払って建設風景のリアルを追求したら重すぎたのかな。

この時代の作品にクライマックスに差し掛かるほど盛り上がりが比例するのかは難しいらしく、それで終わるのねって終わり方は仕方ない。
そして実話を基にしてはいるとはいえ、犠牲者はもっといることを考えると、人間ドラマよりもそっちに尺をとも思えた。
朝鮮人労働者にも触れていないけど、時代が違うから?
美談にするには欠けているものがあるような気がしてならなかった。