ほーりー

飢餓海峡のほーりーのレビュー・感想・評価

飢餓海峡(1965年製作の映画)
4.2
人が犯罪に手を染めるトリガーは何か?それは恐怖心だと思う。

「飢餓海峡…それは日本のどこにも見られる海峡である。その底流に我々は貧しい善意に満ちた人間のどろどろした愛と憎しみの執念を見る事が出来る」

…とナレーションにもあるように、本作の犯人はどこにでもいるような善人である。
そんな人物でも恐ろしい犯罪に手を染めてしまう、人間のゾッとするような一面を描ききったクライム・ドラマである。

青函連絡船の遭難事故のどさくさに紛れ、本土に逃亡しようとした三人の男がいた。後日、三人のうち二人は頭が割られた死体として海で見つかった。函館署の弓坂刑事(伴淳三郎)は逃げ延びた大男・犬飼多吉(三國連太郎)を追跡する。

一方、犬飼は逃亡中に娼伎・杉戸八重(左幸子)と知り合う。一夜を共にした八重は純朴な彼に惚れてしまう。後日、八重は聞き込みに来た弓坂に嘘の証言をして犬飼をかばうのだった…。

その後、映画の中では十年の歳月が流れる。

主役は三國連太郎だが、やはり左幸子と伴淳三郎が出色で、目的は違えども消えた犬飼の影を追い続け、彼が残したものをそれぞれ握りしめていた八重と弓坂二人の姿に人間の執念を見ることができる。

また脇役では警察署長を演じた藤田進が渋く、もしかすると黒澤明よりも内田吐夢の方が、藤田の個性を上手く引き出しているように思えた。

そして刑事の高倉健は、上記の人たちと比べるとどうしても影が薄い。
ほーりー

ほーりー