LalaーMukuーMerry

ゴーン・ベイビー・ゴーンのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

ゴーン・ベイビー・ゴーン(2007年製作の映画)
4.5
誘拐された少女を捜索することになった私立探偵(=ケイシー・アフレック)が、警察と協力して事件を解決するという、ボストンを舞台とする話ですが、驚くほど意外な展開と、とても奥深い内容に心惹かれた作品でした。
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何が正しく、何が間違ったことなのか? 正しいことの判断は何を基準にするのか? 法か、「人の道」か? 親のためか、子の未来のためか? 考えることが求められる、重いけれど、価値ある作品。
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私が主人公だったら、終盤のあの場面、退職した警部(=モーガン・フリーマン)やパートナーのアンジーの言うことに従ったのではなかろうか? それが今の私の答。
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法を厳格に守るということは、正しい態度だと思うけれど、法は現実の細部まで手が届くわけではない、それどころかいつも現実社会の変化の後手に回るばかり。だけど、法が不完全だからといって法を無視することが許されれば、無法社会に逆戻りだ。
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無法社会から法治国家への移り変わりは、歴史的にみて暴力的に行われてきた。それは暴力で敵対勢力を一掃して権力を掌握したものが、高い倫理観を持っていて初めて可能だった。だけど権力を受け継いだものの中に、独りよがりなものが出てくれば、権力者が自ら法を犯す、あるいは自分の都合のよいように法を変えてしまい、逆もどりして無法社会に戻る危険を孕んでいた。人類の長い歴史はそんなことの繰り返しだ。逆戻りさせない巧妙なしくみとして登場したのが民主主義だ。
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現在の世界は民主的になったとはいえ、紛争の絶えない地域はまだ無法社会のままだし、民主的で平和な国の中にも、マフィアなどの無法勢力は残っている。そういう勢力と対峙する局面では、かつての移り変わりの時と同じように、非合法な(暴力による)解決手段が必要な場面も出て来るに違いない。(そこは割り切るしかないとも思うのだが、悪に染まった人間も人の子、変わりうるものだということを信じたいし、それを許す寛容な社会であって欲しいとも思う…)
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レビューを書いていたら、(よくあることだが)いつのまにやら脱線。考える機会をくれた「ゴーン・ベイビー・ゴーン」に感謝。