アニマル泉

ニースについてのアニマル泉のレビュー・感想・評価

ニースについて(1930年製作の映画)
4.5
ジャン・ヴィゴの処女作。映画を撮る喜びに溢れている瑞々しい至福のフィルムだ。このフィルムがなければ「勝手にしやがれ」や「大人は判ってくれない」は生まれなかった。ヴィゴが結核の治療のために滞在していたニースについての実験的な短編ドキュメンタリーである。ヴィゴが人間中心に描いているのがいい。カーニバルに沸くニースの活気、富裕層のファッションや生態、熱狂する踊り子たち、庶民の洗濯、靴磨き、市場の活気など、人間のエネルギーがごちゃ混ぜに提示される。ヴィゴの父は活動家でヴィゴが12歳の時に獄死している。ヴィゴにも鋭い階級意識が備わっていると思われる。コートを着て優雅に坐る婦人が上着がなくなり、さらに裸になってしまったり、カーニバルの馬鹿騒ぎに葬式がモンタージュされたり、視覚的に社会批判していく。
ヴィゴが見ていたのか判らないがボリス・カウフマンの兄ジガ・ヴェルトフが撮った「カメラを持った男たち」の強い影響が感じられる。幾何学模様のモンタージュ、スローモーションなど実験的に挑戦している。ヴィゴは俯瞰が好きだ。本作の冒頭は空撮から始まる。これは「アタラント号」の人物を俯瞰気味に撮る独特のカメラアングルに発展していく。
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