こたつむり

ANTIBODIES -アンチボディ- 死への駆け引きのこたつむりのレビュー・感想・評価

3.3
★ 漆黒の精神と、白濁した祈りと。

ドイツ産サイコスリラー。
お国柄なのか、とても真面目な作品でした。
どんな場面でも全力投球なのですね。
まさしく質実剛健。“職人の国”ドイツに相応しい印象を抱きました。

だから、性的な場面は未成年お断り。
様々な“液体”の臭いがツンと漂ってきそうなくらいに生々しいのです。正直なところ…ドン引きですよ。やはりエロティシズムに重要なのは“幻想”。ベールに隠されているからドキドキするのです。

勿論、猟奇的な部分も同様でした。
それほど具体的な映像は無いのですが、発想が“グロテスク”なのです。ゆえに犯人の性的嗜好も変態ど真ん中で、清々しいほどのクズ。何しろ取り調べ中でも○○○○に耽りますからね。いやぁ。久々に“吐き気を催すほど邪悪”を見た気がします。

そんな“邪悪”に立ち向かうのが主人公。
とても純真かつ真面目な《警官》なので、神の言葉に耳を傾け、被害者の心情に寄り添うのですが…勿論“純白”は容易く汚されますからね。彼がどのように変化していくのか…が本作のテーマ。ただ、宗教と密接に絡み合う描写は少し難解でした。

また、真面目な姿勢も時には仇になります。
お遊びが少ないから“伏線”が丸見えで、着地点が予想しやすいのです。だから、全般的に“もっさり”とした印象を抱いてしまうのは残念な限り。終盤の張り詰めた雰囲気は確実に手に汗握るので…もっと緩急があると良かったと思います。

まあ、そんなわけで。
質実剛健な作りのサスペンス。
“柔らかい”姿勢で鑑賞することをオススメします。そうすれば…本作を違った視点で捉えることも出来るかもしれません。

これはあくまでも想像なのですけどね。
本作は“アンサー”だと思うのです。
「ドイツ人がサスペンスを真正面から作ったらこうなるぞ」みたいなかんじですね。

何しろ、有名なサスペンス映画を彷彿させる場面が仕込まれていますからね。タイトルを書くとネタバレに繋がるので伏字にしますが、サスペンス映画の地位をぐっと向上させた『○○○の○○』と、近年のサスペンス映画の根底にある『○○○』を感じ取ることが出来るのです。

だから、そんな意気込みに応えるように鑑賞してみると…なかなか味わい深いかも。
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