このレビューはネタバレを含みます
現在シネマート新宿で大絶賛上映中の爆発! 宇宙人! 特集で上映された本作『宇宙からのツタンカーメン』ですが、このバカ映画丸出しなタイトルの割には意外と? 真面目な作りのサスペンスになっていてちょっとびっくりしてしまった。ホラーとかSFというよりもサスペンスな作りなんですよね。ま、面白いかどうかは別として…という感じなのだが何か妙に生真面目な作りになってたのが印象に残りました。
世にいうクソ映画というものにはいくつかのタイプがあると思うのだが、その中でも大別すると“自覚的なクソ映画”と“天然なクソ映画”というものがあると思う。前者はまぁ数あるサメ映画とかは大体そうですよね。作ってる方も観る方も、これはクソ映画だと自覚しているもので、そのB級C級果てにはZ級というチープで下らなくてつまんない部分も含めて楽しまれているような映画である。後者の方はこれはクソ映画であるという前提を作り手と受け手の間で共有されていないので、多くの場合は悲劇的な末路を遂げることになる。金返せ! とか言われるのは後者のパターンのクソ映画が多いだろう。だが、その天然さ故に伝説的とまで呼ばれるほどのカルトなクソ映画となるとむしろ後者の天然クソ映画のパターンが多いような気がする。代表的なところでは『ザ・ルーム』なんかがそうではないだろうか。本物には勝てんな…と思い知らされるタイプのやつですね。そこいくと本作も『ザ・ルーム』ほどではないにしても系統としてはそちら側のタイプの映画であろうとは思う。なのでストレートにオススメはできないのは当然として、変化球が好みな好事家でもちょっと二の足を踏むような作品ではあるだろう。
ちなみに余談ではあるが本作は日本ではビデオスルーされた作品なのだがテレ朝とテレ東で地上波放送はされたことがあるらしい。また日本版のDVDも出ているのだが、それぞれタイトルがテレ朝版が『宇宙から来たツタンカーメン/消えたミイラ! 全裸美女に迫る古代エジプトの魔神』でテレ東版が『タイム・ウォーカー/時空の聖櫃』でDVD化の際のタイトルは『宇宙からのツタンカーメン/タイム・ウォーカー 時空の聖櫃』というものらしい。もう何をかいわんやという感じだがタイトルだけでおぉ…となる感じは分かっていただけるのではないだろうか。ちなみに原題は『Time Walker』です。
んで肝心のお話はというと、主人公であるアメリカ人の考古学者の手によってツタンカーメン王の墓から新たな棺が発見され、研究のためにアメリカの大学へと移送されるのだが調査のためにX線で棺を撮影したところ中にあったミイラはどうも人間ではないかも…? ということになる。それと同時に棺の中に隠されていた水晶が盗み出されるのだが、その水晶を取り戻すためにミイラが復活して大学内が大混乱に…というお話である。
ま、ぶっちゃけそのあらすじというかプロットだけならホラーの方向性でもSFの方向性でも普通に面白く出来るんじゃないの? という感じもするのだが、最初に書いたように本作はホラーでもSFでもなく妙に生真面目なサスペンスドラマになっているのである。それが基本的にはつまんないんだけど、何とも言えない味わいを醸し出していて妙にクセのある作品になってるんですよね…。
非常に淡々とドラマが進んでいくのだが外連味というか物語的な飛躍がなくて地味なシーンばかりが続いていくのが逆に面白くなってきてしまうのだ。例えば主人公の教授は教え子的な助手と恋人関係にあるっぽいのだがその設定は物語上まったく意味がない。ぶっちゃけなくてもいい設定である。また3000年前のものであるはずの出土品はどれもがぴかぴかな質感で画的な説得力がまるでない。逃げ出したミイラが暴れるシーンはあるのだが行使されるのがまさかの物理攻撃でミイラという個性から連想されるような呪いとか魔術的な超常な力は全く描かれない。それでいて主要登場人物の人間関係とかは妙に丁寧にサスペンス調で描かれるのである。
これはね、もう面白くないけど観ちゃうよ。俺は一体何を観させられているんだ…的な意味で観ちゃうもん。多分、やたらサスペンス調になっている理由としてはひとえに金がないからというだけなのだと思うがそれが何か独特の緊張感を生んでいる作品だと思うな。緊張感とは言っても手に汗握るとかそういう類のものではなくて、これお話が全然広がらないけど一体どんなオチになるんだよ…という老婆心というか本当に大丈夫かコレ? という意味での緊張感なのだが…。
ま、そんな風にこれマジでどう終わらせるの…? と思いながら観ていたところにやってくるラストシーンは凄かったですね。マジでぶったまげたわ。今年一番びっくりしたラストシーンかもしれん。この衝撃は劇場で味わってほしいから伏しておきたいのだが、本作を劇場なりレンタルなりで見る機会は少ないと思うのでネタバレありにした上で書いてしまうが、ミイラは実は宇宙人だったというオチになります。
いやでもそれは『宇宙からのツタンカーメン』というタイトルの時点で想像できるじゃんって思うでしょう? 古代文明に宇宙人が関連していたというのもオカルト界隈では鉄板ネタなので容易に想像できるじゃん! とも思うでしょう? でも本作のラストで俺が愕然としたのはそこではない。
本作のラストシーンはその宇宙人ミイラが主人公の考古学者と握手した瞬間に彼らが瞬間移動(宇宙人の母船にでも移動したのだろうか…)したところで終わり、なんと「to be continued」の字幕が出て終わるのだ!! 続くのかよ!!!!!!!!!!!!!!
これはもうぶったまげたよ。リアルに「嘘やろ…?」って呟いちゃったよ。これは予想してなかったな。いや完全に虚を突かれた。いやだってこのどう観ても限界予算のZ級映画が、超大作ですが? みたいなツラして次回に続くとか予想不可能でしょ。「嘘やろ…?」って呟いた後にめっちゃ笑っちゃったよ。
ちなみに本作が制作されてから40年以上が経っているが、ネット上で軽く調べた限りでは続編は存在していません。もちろん、自主製作映画的な形で続編が存在する可能性は否定できないが、きっとあったとしても俺がそれを目にすることはないであろう。あるんだったらめっちゃ見たいけど、まぁないだろうな…。
いやほんと、最大のサプライズの部分を書いちゃったけどさ、正直このラストシーンのためだけにも観るのはアリだと思いますよ。特に面白くはない映画だけど、不思議と“観てよかったなぁ”と思える映画ではあるので。いや、好きですよ俺は。面白くはなかったけど、好きですね。
続編やってくれたら100パー観るよ!!!