唯

ゴースト・オブ・ミシシッピーの唯のレビュー・感想・評価

3.4
「法律的に差別が消えても感情は永遠に残るもんだ」
時代が変わっても、その時代を構成する人間は60年代のまま。
若い人間は違うかもしれないが、60年代を生きた人間は平気でクロ呼ばわりするし、法が変わっても人々の内面は変わらない。

過去の黒人殺害事件を再起訴することを白人は嫌悪する。
差別が撤廃されたとはいえ、白人の中には白人優位の思想が当たり前にこびりついているのは狂気的ですらある。

白人ブロンドの象徴の様な女の妻もまた、狭いミシシッピの中での世間体を考えては夫の仕事を否定する。
一方で、再婚した妻は医者だけあって知性があり、彼の仕事をリスペクトして支えてくれるのだから、これはこれであるべき巡り合わせだったのだろうなあ。

どいつもこいつも自分のことしか考えていない。
そこに一人の人生があって家族があってということを想像する前に自らの生活が変わることを恐れるのが人間の愚かさ。

アメリカの裁判ものを見るといつも思うことだが、陪審員制度は有意義なものなのだろうか。
陪審員の構成によって判決が変わるし、素人の主観的な感情に頼って良いものなのか?

裁判で問われるのは真実ではなく、人々の思想である。
30年の時を経て確実に時代は変わったということが証明された。
この長い旅路は必要だったのである。
唯