えるどら

ピーター・パンのえるどらのレビュー・感想・評価

ピーター・パン(1953年製作の映画)
2.8
夢のような世界なのになぜか怖さを感じてしまったのは僕が大人になったからだろうか。

ディズニーの古典を今更視聴。
もしかしたらすごく幼い頃に見たことあったかも…?

字幕版だったから「ネバーランド」って「Never grow up (成長しない)」のネバーだったと知れた。
それってあんまりよくないんじゃない?なんて思ったのは僕が大人だからだろうか。
ネバーランドって夢の国・理想郷みたいなイメージを持っていたけれど、実際は意地悪や差別なんかが横行する場所だった。
ティンカーベルも人魚もウェンディに嫉妬して意地悪をするし、移民(現実からネバーランドにやってきた白人)とインディアンの戦争ごっこは続いてるし、人食い族の洞穴や首吊り男の木とか物騒な名前の場所もある。
この映画が公開された1950年代の価値観は僕にはわからないけれど、ネバーランドはすごく残酷な場所に見えた。

そんな場所でピーターパンだけがどこまでも無邪気で、それがどこか不気味で、そんなピーターパンに浮かされて追従する子供たちを見ているのは少し怖かった。
ピーターパンはどこから来て、何をして生きているのか、みたいなことを考えたとき、彼がウェンディたちを見染めて近づいてきたことを思い出した。
ピーターパンという存在のいちばん最初は、人攫いをなんとか美化しようとしたものだったんじゃないか…とか考えてしまって少し辛くなった。
作中で何度も笛を吹いていたのもハーメルンの笛吹き男を思い出す。
子どもたちにとってヒーローであるはずのピーターパンは、大人の僕には素性不明で無邪気で恐ろしい何かに見えたのだ。

ディズニーヴィランのベテラン、フック船長はほんとに魅力的な悪役で、それでいてその人間らしさに少し安心した。
スミーとの掛け合いやチクタクワニを恐れているのも面白い。

総じて1950年代に作られたとは思えないほど素晴らしいアニメーションで、ディズニーカートゥーンアニメーションらしい動きや表情に惚れ惚れした。
でも僕はネバーランドに行きたくないかもなぁ~、たぶんもう行けないんだろうけど…。
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