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この窓は君のものの海のレビュー・感想・評価

この窓は君のもの(1995年製作の映画)
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授業でやるプール、大嫌いだったな。夜風で白く波立つ小学校のプールの前でそう言ったら、そんな感じがするねと嬉しそうに笑ったそのひとを見て、泣きたくなるくらい安心した。夏は苦手だけど、たぶん嫌いじゃない。愛しくはないけど、たぶん少しは恋しい。夕方、5時と6時のチャイム、スーパーで選ぶ、花火のセット、ひぐらしの鳴き声、お線香の匂い、夜のプールと、人が去ったあとの海。扇風機に吹かれながら、友だちが言う、来週はもう8月かぁ。彼女の夏は誰なんだろうと思う。夏と聞いて、思い出せるひとは、かならずいつも、ひとりなのかもしれない。来年も同じひとを思い出すのかな。いつかそうじゃなくなるのかな。わからない。なんにもかわんないなって思えるくらいがいい。そっと言って、願いと、ほんとのことの、ちょっとのすきまのことを、終わったことや失くしたものが息をふきかえす季節に、おしえて、未来永劫、わたしたちはここにいて、時間は、わたしたちだけのものだということを。もう戻れない過去があり、だけどそこにはいつか、ちゃんと自分が居たように、未来もまた、そんなふうじゃないかと、最近はおもう。
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