ひでやん

ヒッチコックのゆすりのひでやんのレビュー・感想・評価

ヒッチコックのゆすり(1929年製作の映画)
3.5
誤って男を殺害してしまった女性が、事の真相を知った男からゆすられる様を描いたヒッチコック初のトーキー映画。

当初サイレントの手法で制作されたが、急遽トーキー化される事になり音声が入るシーンを撮り直したという本作は、サイレントの逮捕劇で始まり、事件が一件落着してからトーキーへと切り替わる。

殺人現場で刑事が見つけたものは恋人の手袋だったという展開はサスペンスとして実に面白いのだが、そこに至るまでの経緯でアリスという女に嫌悪感を覚えた。

刑事の仕事を終えた彼氏に労いの言葉もなく、待ち合わせに遅れた事にご機嫌斜め。偶然知り合った男にホイホイついていき、襲われそうになり殺害。そして証拠隠滅後に帰宅という女に自業自得という言葉しか浮かばない。刑事の妹が恋人と喧嘩になり殺害という設定の方が良かったかな。

不安や恐怖を煽る演出は流石で、特に印象的だったのは「手」のショット。冒頭の逮捕劇では新聞から銃へ伸ばす手、殺害シーンではカーテンからナイフを掴む手と死んだ手、そして帰路を辿るシーンでは手のショットのフラッシュバックが秀逸。ネオンや浮浪者が忌まわしい記憶と重なる演出も良い。

ヒッチコックの意に反して変更されたというラストは、良心の呵責に蓋をしたようでモヤモヤが残った。刑事の職務を全うするヒッチコック案の方が好きだな。
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