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リプリーズ・ゲームのRのレビュー・感想・評価

リプリーズ・ゲーム(2002年製作の映画)
4.5
2回見たけど全然好きになれなかった問題作『愛の嵐』の監督リリアーナカヴァーニの作品ちうことで、あまり期待せず見たのだが、これは面白かった! 何とも言えない独特の魅力が満ち満ちていた。まず、主人公のトムリプリーを演じるジョンマルコビッチが歴代最高のハマり役なのでは! めちゃめちゃクールなダーキッシュなベースが印象的な音楽をバックに、ベルリンで友人?のリーブスの大金強奪をお手伝い、ってかぜんぶやったげるシーンから始まる。リプリーはほとんど無表情、ねちっこい喋り方が大変にキモく、まったく悪びれた様子なしで淡々と悪行をこなしていく。まるで獲物を狙うプレデターのよう。彼は豪邸に妻と使用人と暮らしてて、ある日またリーブスが訪ねて来て、消したい奴がいる、と依頼する。が、リプリーは、うちの近所の額縁職人ジョナサンに頼んだらどうかと推薦する。ジョナサンは今までに犯罪などおかしたことないごくごく普通の男だ。なぜか? ジョナサンは治る見込みのない白血病にかかっており、妻と息子がいるので金を残しておいてやりたいという気持ちがあるのだ。なので、リーブズが依頼を持ち込んだとき、最初は大いに戸惑いながらも、その話にのっかってしまう…という流れで、人間的共感ゼロのリプリーのゲーム感覚の殺人エピソードに巻き込まれる一般人ジョナサンの奇妙な災難が展開する。その中でジョナサンとリプリーの間に謎の精神的つながりができていくプロセスがとても興味深い。自分は死に向かっていると意識した人間は、他者とのつながり方に変化が起こり、重視するものがシフトするは当然のことだとは思うが、それにしても本作のそれは非常に面白く、それが見てるこちらにちゃんと説得力を持って伝わってくる。で、リプリー君、超人的なところがあるためか、非人間性の中に偽りのない真実さが息づいているためか、つかみどころのない魅力が心に捕らえてはなさない。この不思議。こんな奇妙なキモキャラを、こんなに巧みに体現できる役者は、マルコビッチ以外にはありえますまい。そんな彼のなかに不思議な親愛的感情が芽生える終盤はスリリング! Why did you do that? はよかったなー。そのあとのマルコビッチの目を通してのクライマックス、微笑み。うーん。素晴らしい演出! あと、全編映像がめちゃめちゃカッコいいです! 映像だけでも見る価値高いのでは。2000年以降の作品とは思えないタッチやけど。80年代後半のダークなヨーロピアンホラーみたいな空気感。そういうのが好きな人は確実に楽しめると思う。1回目鑑賞時はストーリー展開が読めなさすぎて絶えずどーなんねや?どーなんねや?って思いながら見たので細かい旨味を見逃してる点が多いと思うので、2回目以降はもっと楽しめそうな予感がしている。是非ともまた見たい一作。
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